日常生活において身体活動量が多いことは認知機能低下を抑制するために有効であることが報告されている。身体活動が認知機能の維持・向上とともに脳構造や脳活動などの神経基盤へ与える影響については報告がある。一方、認知機能低下があるものにおいて身体活動量が低下することが報告されている。しかし、これらの報告では身体活動量を取得するために質問紙を用いていることが多く、リコールバイアス等から活動量を定量化する際の客観性が低下してしまう。そこで、本研究は加速度計を用いて身体活動量を客観的に定量化し、認知機能低下に関わる神経基盤との関連性を検証する。本年度は安静時の脳活動のネットワークと身体活動量について検討した。 軽度の認知機能低下(MMSE得点:21~24点)がある高齢者44名に生活の中で加速度計を装着してもらい、日常生活の身体活動量を計測した。安静時脳活動はfMRIを用いて閉眼・安静状態の脳活動を計測した。日常生活の身体活動量の中で中・高強度以上の身体活動量を平均し、身体活動量と安静時における脳の機能的なネットワークに関係が見られる箇所をMATLABおよびCONN toolboxにて解析した。年齢・性別・白質と脳室の容積、および脳活動計測中の体動の影響を調整し、身体活動量と安静時の脳の機能的なネットワークの正の相関について検討した。結果、日常生活において歩数が多いと左右舌状回と右の被殻および左の縁上回、および鳥距溝と右の被殻との間に正の相関が見られることが明らかとなった。現在、同様の対象者において身体活動量の増加に関連して向上している認知機能についても解析・検討しており、成果報告書において結果を報告する予定である。
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