研究課題
本研究は、社会的認知機能の代表的要素である共感性に着目し、これらと関連する諸要因を解明するとともに、高齢者の社会的認知機能に関わる神経活動の特徴を探ることを目的とした。高齢者機能健診に参加した4112名(平均年齢:71.5±7.0歳)を対象に社会的認知機能に関連する諸要因について検討を行った。28項目のDaivis (1983)の多次元共感測定尺度の日本語版(桜井, 1988)を用いて、因子負荷量が大きい8項目を共感性尺度として使用した。共感性尺度の得点が高い群(上位25%:1178名)と低い群(下位25%:1040名)に分けて、多変量解析により社会的認知機能の主要要素である共感性の関連要因を検討した。その結果、女性より男性の方で共感性が低かった (p<0.001)。共感性が高い群より低い群では手段的日常生活活動(IADL)の得点が低く(p=0.040)、記憶 (p=0.028)、注意 (p=0.016)、実行機能 (p=0.014)の得点が有意に低かった。しかし、年齢、教育歴は共感性と関連を示さなかった。共感性が高い群に比べて低い群のほうで身体的フレイル(体重減少、疲労、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下のうち3項目以上該当)と社会的フレイル(家族や友人の役に立っていると思わない、一人暮らし、友人の家を訪ねていない、外出の減少、毎日会話をしていないのうち、3項目該当)の該当者が多かった(p=0.003, p=0.002)。本研究からは社会的認知機能の代表的要素である共感性とこれらの諸要因との間の因果関係については延べられないが、高次認知機能や身体的・社会的活動が高齢者の社会的認知機能に関与する可能性が示唆された。社会的認知機能に関わる神経活動については現在解析を進めており、成果報告書にて結果を報告する予定である。
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Geriatrics & Gerontology International
巻: 該当なし ページ: 該当なし
10.1111/ggi.13018
10.1111/ggi.12910
The Journal of Nutrition, Health & Aging
巻: 20 ページ: 729-735
10.1007/s12603-016-0685-2
10.1111/ggi.12841