研究課題/領域番号 |
15K16390
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関口 雄介 東北大学, 大学病院, 理学療法士 (60535095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳卒中片麻痺 / 歩行 / 運動力学的パラメーター / 協調性 / 関節の剛性 / 3次元動作解析 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、3次元動作解析装置を用いてⅰ)21名の脳卒中片麻痺患者と10名の健常者の歩行を測定し、歩行中の立脚期における足関節の剛性と、ⅱ)18名の脳卒中片麻痺患者と10名の健常者の歩行を測定し、歩行中の立脚期における股関節の剛性、ⅲ)21名の脳卒中片麻痺患者と12名の健常者の歩行を測定し、主成分分析にて歩行中の下肢の各関節で発揮される力の主成分を解析した。脳卒中片麻痺患者において、健常者と比較し、麻痺側立脚期の足関節背屈の最終域で生じる剛性は低下し、股関節伸展の最終域で生じる剛性は増加した。また、麻痺側の各剛性は推進力となる足関節パワーと股関節パワーと有意に相関し歩行速度とも有意に相関した。これらの結果は、脳卒中片麻痺患者においてQOL(quality of life)の向上にとって重要な歩行速度を改善するために、足関節と股関節の剛性を増加させる必要性を示唆している。更に、主成分分析を用いて算出した、下肢の各関節で発揮された力の第一主成分と推進力を示す床反力の前後方向成分との相関係数を調べ、健常者の左側と脳卒中片麻痺患者の麻痺側、非麻痺側の間で比較した。その結果、麻痺側の相関係数は非麻痺側の相関係数より有意に低い値であった。以上の結果より、脳卒中片麻痺患者の麻痺側において足関節と股関節で力学的な協調により十分に推進力が得られていない可能性がある。この結果は、歩行中の推進力を得るためには、先行研究にて解析されてきたように脳卒中片麻痺患者の歩行中において単関節での力発揮の評価をするのではなく、各関節間の力学的な協調性から生成された値を評価することの重要性を示唆している。 これらの得られた知見は、これまで調べた先行研究はなく、新規性のある知見となった。また、研究で算出されたパラメーターは脳卒中片麻痺患者の歩行を評価する、新たな有用となる指標として使用出来る可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度に計画していた、脳卒中片麻痺患者の歩行の立脚期における股関節と足関節の運動力学的データの解析においては、測定、解析ともに終了した。また、足関節の剛性に関する研究に関しては、論文化し受理されている[Gait Posture,42(3),(2015),348-353]。また、主成分分析にて脳卒中片麻痺患者の歩行中における下肢の各関節で発揮された力の主成分を解析した研究についても、論文化し投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成27年度で解析したデータを元にして、剛性調整型足関節、股関節装具を試作する。試作した装具を健常者を対象に装着させ、各装具で数段階の剛性を組み合わせた条件で歩行を測定する。その結果を元に剛性を変化させることによる健常者の各関節の力発揮及び力学的な協調性への影響を調べることで、より適切な推進力を得るためには、どのような剛性の組み合わせが適切であるかを検討する。また、同時に装具の操作性、快適性についてアンケートを取り、適宜、剛性調整型足関節、股関節装具の修正を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定してた旅費の支出が不要となり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の予算は、カムーバネ継手式装具の開発費用と、学会出張時の旅費に使用することを計画している。また、実験で協力して頂いた被験者への謝礼金や研究で必要な書籍の購入費に使用することも計画している。
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