糖尿病患者における合併症の一つとして,神経障害がある.神経障害が進行すると,末梢の感覚が失われる問題がある.特に足部については,靴ずれや胼胝(いわゆるタコ)が生じても神経障害により痛みを感じられないことから,その発見が遅れ,足潰瘍へと発展する可能性があることが知られている.靴ずれや胼胝を生じさせる原因の一つとしては,足に合わない靴の問題があり,臨床的には足潰瘍予防として,適切なサイズの靴の選択や靴紐を閉めて靴内部の足の移動を抑えるように指導が行われている.しかし,それらの教育的効果の確認として,客観的な計測については実現されていない.具体的には,足部にかかる圧力やせん断力の計測,また,靴との関係で考えると靴と足のフィッティングについてである.計測自体については,依然として臨床現場等で利用できる形になっているとは言い難い問題がある. その実現として,これまでに,足部の力の計測システムとして,薄いインソール内部に圧力センサ・せん断力センサを埋め込み,足底にかかる力を計測可能なシステムを構築した.インソール型であるため,任意の靴に挿入し,圧力・せん断力を計測することが可能である.加えて,インソール埋め込み部位の計測とは別に計測するシステムとして,薄型のせん断力センサを貼付し計測するシステムについても取り組んだ.臨床現場での利用を考え,単純な力計測だけでなく,その力の計測結果を指導する看護師や患者へとフィードバックしやすいように,データを可視化するためのソフトウエアも開発した.また,力だけでなく,その時の靴と足のフィッティングについての指導も考慮し,ハンディ型の3次元スキャナでの靴や足の3次元表面計測とその計測に基づいたフィッティング可視化についても実現した.
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