研究課題/領域番号 |
15K16395
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
久保 孝富 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特任准教授 (20631550)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多点表面筋電位信号 / 機会学習 / 深層学習 / 発話 |
研究実績の概要 |
本研究は多点表面筋電位信号から音声認識を実現することで,発話障害者の意思伝達支援に応用可能な技術の確立を目指すものである.この多点表面筋電位信号は格子状の計測点を有する電極を用いて,そこから表面筋電位を導出することで得られる.この多点表面筋電位信号を発話時に計測し,通常の音声認識と同様にパターン認識処理を施すことで,上記の技術の実現を試みるという方針であった. 計画としては,この多点表面筋電位信号の空間パターンに対して,近年様々なパターン認識の応用例で優れた性能を示している深層学習の導入を予定していた.一方で実際に深層学習を適用するに当たり,ニューラルネットワークの層数・層辺りのノード数・適切な事前学習法の選択などについて適切に選択する必要が生じる.初年度は入力データの空間パターンの複雑さに応じてそれらを適切に選択する指標の探索について取り組み,その一部を国内外の会議にて発表した. 今年度はその関連内容についてさらに詳細な検討を加えて論文誌への投稿を行い,掲載される運びとなった.また,それと並行して発話時の表面筋電位信号に実際に深層学習の適用を進めた.徐々にではあるが成果を得られつつあり,その成果についても国際会議へ投稿の準備を進められるよう鋭意努めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗はやや遅れているが,それは大きく二つの理由によるものである.但し,これらはいずれも初年度時点で発生したものであり,今年度についてはその遅れによる影響が残った形である.一つは,本研究立案・開始後に提案内容と類似した研究内容が発表されるようになり,計画の見直し・再調整などが必要となったことである(Wand et al., Proc. IEEE EMBC, 2014; Diener et al., Proc. IJCNN, 2015).これらの類似研究に対して優位性・独自性を示せるような計画とするために,初年度の時点で再考の期間を要した.もう一つの理由は,深層学習の適用時にはモデルの設計・パラメータ設定がしばしば困難であり,本研究においても同様の状況に直面したため,想定より長い期間が必要となったことである.そのような状況を回避するために,情報理論的評価尺度を用いて適切にモデルの設計や事前学習ができるかなど検証を行った.しかしながら,それ自体が研究テーマとなるようなレベルのものとなり,時間を要してしまうこととなった.その一方で,この検証によって有益な知見を蓄積することができ,一部は国内外の会議,国際論文誌への投稿に繋がった.これら2点の影響を受けて,本年度は遅れた状態でスタートすることとなった.しかし,その中でも上記のような成果を得つつ,新たに発話時表面筋電位信号からの音声認識手法を構築できるようになるなど,徐々にではあるが遅れを挽回しつつある状況である.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の計画通りの遂行を考えているが,初年度に類似した研究の発表があったことなどから,一部計画の見直しが必要となり,先送りとなっていた内容があった.速やかに先行研究に追従・差別化できるよう再計画し,今年度はその遅れを取り戻せるように研究活動に取り組んできたことで,徐々にではあるが遅れを挽回できつつある.引き続きこのペースを維持して次年度の内容を遂行していくことで,遅れの解消を行う方針である.また,発話時表面筋電図のコーパスの存在が明らかとなったため,その活用により更なる推進を図ることも検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,初年度に提案内容と類似した研究内容が発表されたことにより研究計画の見直しが必要となったことに起因する.そのような類似研究の発表に伴い,差別化を図ることが必要となり,そのため予算の使用も先送りとなった.初年度のこの遅れに端を発し,物品調達の計画が順次先送りとなったため,次年度に繰り越して使用することとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
使用時期は当初の予定より遅れているが,使用する内容について当初の計画から変更する予定はない.繰り越された予算については,計画遂行のために,平成29年度分と合わせて効果的かつなるべく速やかに使用する予定である.
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