研究課題/領域番号 |
15K16398
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
中村 裕二 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (80404789)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 乗馬療法 / 脳性麻痺 / 補装具 |
研究実績の概要 |
障害児を対象とした乗馬療法では、筋活動の非対称の改善や平衡感覚の向上、コミュニケーション能力の向上、心理的な癒し効果などの効果が示されている。しかし運動障害をもつ対象児においては、乗馬姿勢が不安定になることが多く、適切な効果が得られにくいことが考えられる。本研究では、乗馬療法を実施している脳性麻患者に対して頚部や体幹を保持する簡易補装具を作製し、その長期的な効果を健常成人との比較から検討する。今年度は、昨年度からの続きとして、脳性麻痺患者二名に対する補装具の効果を追うとともに、健常成人におけるデータを測定した。 経過として、健常成人5名では被験者全員において、頸部の屈伸は最大で20°の変化に収まり1歩行周期の半分は5°未満の変化であった。体幹の屈伸は10°未満であり殆ど変化はみられなかった。肘関節の屈伸は20°の変化であった。症例では、作製した保持具の即時的な効果として、頚部の屈伸リズムが一定になるという変化が確認された。使用前、頸部は馬の後脚接地時に屈曲しその後伸展するが、変化の幅は30°や80°と一定していなかった。体幹・肘関節は後脚接地に合わせて屈曲し、その後伸展をしていた。いずれも10°未満の変化がみられていた。補装具の使用により、頸部の屈伸運動のリズムは一定になり、変化も20°以下となった。体幹・肘関節の屈伸はともに変化の幅は20°程度となり、拡大した。これは、頚部の不随運動が抑制されたことにより、中枢部を過剰に固定することなく、馬の動きに合わせて体幹と肘関節を屈伸できたためと考える。使用後半年後、更に半年後は、健常成人と類似した動きとなり、乗馬中、頚部、体幹、肘関節ともに、ほとんど変化がみられない状態となった(各関節ともに10度未満の変化)。このことは、頚部不随運動を減少させつつも、中枢部を自ら姿勢保持できるようになったことが原因と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳性麻痺児の経過については、対象者に対する補装具の作製・修繕ともに順調に実施できたが、今年度は悪天候が多くデータ計測の回数自体が予定通りには実施困難であった。健常者に対しても同様の経過であった。
|
今後の研究の推進方策 |
悪天候に備えて、計画的にデータ計測を実施していく。また、補装具の修繕や改良も随時行い、対象者の身体特性に合わせた補装具の効果検証を継続していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度はデータ計測と分析に遅れを生じたため、それに関する機器整備、謝礼などの支出が実行されなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度前半までに、機器整備、データ計測にともなう謝礼、学会発表旅費の支出を予定している。
|