研究課題
リンパ管組織を用いてレプチンを投与した状態でリンパ管内腔に与える機能異常を確認する。これまでにレプチン未刺激と高濃度刺激で一定期間細胞培養した結果、レプチン高濃度刺激によりリンパ管内腔が脆弱化することを確認していたが、透過型電子顕微鏡を用いてもリンパ管内皮細胞の形態異常を確認することができた。レプチン刺激によるリンパ管内皮細胞の機能的意義を解明するため、リンパ管内皮細胞の管腔形成能や増殖能の実験を実施したところ、レプチン高濃度刺激により管腔形成能と増殖能機能低下していることを確認した。この機能異常のメカニズムの解明に、私たちは高濃度レプチン刺激によるtight junctionの異常を考え、代表的な分子であるClaudin-5, Occludin, VE-cadherin, ZO-1のタンパク発現の確認を実施したところ、いずれの分子もレプチン高濃度刺激によるタンパク発現の変化を認めなかった。次に、レプチン刺激による血管内皮細胞の機能異常の先行報告より、炎症性サイトカインの発現変化を検討した結果、IL-6のmRNAとタンパク発現が亢進していることを確認した。レプチン刺激によるsignaling pathwayではSOCS3のタンパク発現亢進を認めた。SOCS3はJAK/STATの抑制に作用し、管腔形成能と増殖能の低下を認めたこと考えられる。しかし、IL-6単独刺激ではSOCS3のタンパクの発現亢進を認めないことから、レプチン高濃度刺激によるSOCS3とIL-6によるSCOS3が異なる経路であることが示唆された。以上の結果から、レプチン高濃度刺激により管腔形成能や増殖能が低下し、炎症性サイトカインであるIL-6の発現亢進により、肥満者にリンパ浮腫発症が多いと言われる臨床的意義の解明の1つであることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
28年4月より研究代表者の所属が変更になったが、現在のところ本研究課題はおおむね順調に進展している。
平成27年度の研究計画はおおむね順調に進んでいることから、次に乳癌術後患者と既存リンパ浮腫患者の血清レプチン量とリンパ浮腫の関連について研究を継続する。実際の臨床場面においては、非肥満者であってもリンパ浮腫を発症する患者が来院される。そこで、乳癌術後患者やリンパ浮腫患者から血清レプチン発現量をELISA法にて確認する。脂肪細胞から分泌される因子(レプチン等)の発現量がリンパ浮腫の発症や増悪因子となるかを探る。さらにリンパ浮腫患者の多くが炎症(蜂窩織炎)を発生する可能性が非常に高いと報告されていることから、ヒトリンパ管内皮細胞を用いた実験では、培養温度の違いによる形態(管腔形成能、増殖能など)の変化を確認し、実際のリンパ浮腫に結びつく可能性を検討する。最終的に、計画書で掲げた適切な運動療法や有効的な複合的治療による患者支援が、臨床患者におけるリンパ浮腫の発症や増悪予防や血清レプチン量にどのような影響を与えるかの関連を解析する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Clinical Immunology
巻: 158 ページ: 204-211
10.1016/j.clim.2015.02.016