研究課題/領域番号 |
15K16407
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
中村 太郎 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 助教 (70373082)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | IPMC / センサ / スマートテキスタイル |
研究実績の概要 |
Nafion117(厚さ約180μm)に金メッキを施し、幅1mm、長さ100mmのセンサ素子を90度までの角度で屈曲させた時の起電力を計測し、繊維状IPMCセンサの実用性の評価を行った。その結果、繊維状の細いセンサ素子でも計測に必要な振幅が得られ、屈曲時の起電力は変位にほぼ比例し、変位センサとしての実用性が確かめられた。また、IPMCセンサは高分子中に水が含まれている時と含まれていない時で応答性に違いが現れるため、両方の状態のIPMCセンサを用いて起電力の計測を行った。その結果、濡れているセンサは遅い運動の場合起電力が小さくなり、早い運動であれば、両方のセンサの起電力に違いは現れなかった。しかし、高分子中に水が含まれているIPMCでは、起電力のピーク電圧が時間とともに減少するため、変位が保持された状態での計測には不向きであることが明らかとなった。 次に、繊維状のIPMCセンサを比較的網目の大きい布の網目に通していき、擬似的に布にIPMCセンサが編み込まれた状態にして、人体の関節運動検知用スマートテキスタイル素子の試作を行った。この関節運動検知用スマートテキスタイルを手首関節に取り付けて、手首関節の屈曲・伸展運動、回内・回外運動を行った時の起電力の計測を行った。既存の関節運動用センサ(ゴニオメータ)との比較試験を行い、実用性を検討した。その結果、屈曲角と起電力の大きさはほぼ比例し、関節運動検知用センサとしての実用性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IPMCセンサの変位センサとしての実用性が明らかとなり、IPMCセンサを組み込んだ関節運動検知用スマートテキスタイルが、人体の関節運動の種類判別、及び屈曲角と回転角の大きさが推定可能となった。しかし、回内・回外のような回転運動の検知には平面的にセンサを配置しただけでは、屈曲・伸展運動の起電力波形と区別ができなかったため、IPMCセンサを螺旋状に配置することで、回転運動の検知が可能となった。その一方で配置するセンサの種類が増えたことと配置が立体的になり、構造が複雑になっているため、センサの配置に関して再検討が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は手首関節に加えて、肘、膝、足首のような人体の主要な関節に関節運動検知用スマートテキスタイルを取り付け、センシング特性の再現性の確認と各関節に最適なセンサのサイズ、配置について検討を行い、関節運動検知用スマートテキスタイルを完成させる。 また、IPMCセンサ表面の金属部分の生体電気信号計測用電極としての実用性の検証を行う。具体的にはIPMCセンサを用いて生体電気信号計測用の皿電極を作成し、筋電波形及び心電波形の計測を試みる。計測された波形と既存の生体用皿電極で計測した波形とを比較して検討を行う。 電気信号が計測可能であれば、人体の動きと生体電気信号の両方を一つのセンサ素子で計測可能となり、患者のモニタリング用衣類に用いるセンサとして高い実用性が示される。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた生体用アンプ(AP108)の見積金額が当該年度の予算を超え、次年度予算と合わせて購入する必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
IPMCセンサを用いた生体電気信号用電極の評価のために、生体用アンプ(AP108)と電極やケーブル等を購入し生体電気信号計測が可能な環境の整備を行う。また、IPMCセンサ作成に必要な薬品及び試料の購入を予定している。旅費については学会とセミナーの参加、研究成果発表を5~6回程度を予定してる。
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