|
本研究ではIPMC（Ion Polymer Metal Composite）と呼ばれる金属と高分子の複合体をセンサ素子に用いて、人の動きと生体電気信号を常時モニタリング可能な高機能衣類の開発を目的とした。
平成27年度は幅1mm長さ100mmの繊維状IPMCセンサを布に編み込んで、人の動きを検知可能なスマートテキスタイルの作製と動作特性の検証を行った。
作製したスマートテキスタイルを人の肘関節に取り付け、屈曲伸展運動及び回外回内運動時に生じるIPMCセンサの起電力を計測し、既存の関節運動用センサ（ゴニオメータ）との比較試験を行った。関節運動の変位量に対して生じる起電力の大きさはほぼ比例関係にあり、センサ特性は良好であった。しかし、センサ素子が1つ場合には屈曲伸展運動と回外回内運動とを判別することが困難であったが、センサ素子を複数配置することで運動の種類を判別することが可能となった。
平成28年度はIPMCセンサを用いて作製した生体電気信号用電極の実用性の検証を行った。IPMCを用いて表面皿電極を作製し、これを各運動の主働作筋の直上に取り付けて筋電図計測を行った。IPMCを用いた皿電極で計測した波形は標準の生体用皿電極と比較して振幅は小さくなるものの、計測された筋電図の周波数には影響はみられず、IPMCセンサの生体電気信号用電極の実用性を示すことができた。また、筋電波形と運動時のIPMCセンサの変形による起電力の同時計測を行い、筋電波形とIPMCセンサの起電力が合成された信号を得ることができ、この信号はフィルタを用いることで運動の種類及び変位量と筋電波形を用意に分離することが可能であった。
今後は、他に計測可能な生体信号の特定、また、衣類への実装を目的として激しい運動時にもノイズが乗らないようなセンサの形状及び配置について検討していく必要がある。
|
