研究実績の概要 |
本研究の目的は軽度うつ状態早期発見支援システムの開発である. 重度うつ状態に進行する前に発見し, 適切な受療を促すことで自殺等を未然に防ぐシステムを開発する. 申請者等はこれまで圧力分布センサを用いて, うつ状態の自動発見を目指した行動認知の基礎研究を行ってきた. 本研究はこれを基に専門医の協力の下で実用的な支援システムを開発する.うつの発見と治療には, 家族や周辺の人々にも病に対する正しい知識や理解をもってもらうことが必要であるが, 現実は容易ではない. 未治療のうつ病患者は症状出現の原因が身体の病気や自分の能力不足であると考えることが多く, 専門医での治療を受け難くしている. 本研究は普段との様子の違いが気づかれ難い独居者を対象に, 各種センサを用いて睡眠障害, 摂食障害, 精神運動機能障害, 体重の異常増減, 入浴の有無等を自動検知することにより,普段との行動の違いを逸早く検知したり, 専門医からの知見を導入することによって, うつ状態の早期発見を支援するシステムを開発する.本システムでは様々な日常の行動をセンサで知覚し,特徴量として行動を認知するが,本年度はうつ病患者の100%で発症する睡眠障害について焦点を当て,これを認知するシステムを開発してきた.具体的にはベッドや布団などの寝具の上に敷くシート状の圧力分布センサを用い,体圧の変化,重心の移動,つまり寝相を検知することで入眠障害,中間覚醒,熟眠障害,早朝覚醒などの基本的な不眠における睡眠障害を認知し,うつ状態かどうかの診断指標の一つとする.現在までに,6名の成人男女の協力を得て,睡眠動態の実験を重ねているところである.また,圧力値で寝返りや覚醒などの体動をどのように定義するかを検討している.
|