研究課題/領域番号 |
15K16418
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
小幡 哲史 電気通信大学, その他の研究科, 研究員 (40631099)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 聴覚-運動制御 / バイオリニスト / 身体化 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的はヒトの精緻な運動制御を支える聴覚-運動制御モデルのメカニズムを明らかにすることである。卓越した楽器演奏者は意図した音を実現させるために音を結びついた複雑な運動制御を行っていると考えられることから、本研究では楽器演奏者、特にバイオリニストを対象に実験を行う。バイオリニストは1センチ単位で音の高さがずれてしまうほど精緻な運動制御が求められることから、バイオリニストの音高と運動に関する正確性について明らかにする。 本年度は、バイオリンの弦上で演奏者がどこを押さえているのか計測するための実験用バイオリンの製作を行った。押弦位置測定については先行研究(Chenら2008)において、指に薄い銅箔を貼付け、微弱な電流を流した弦に触れることで、位置の測定を行っている報告があるが、本研究では演奏者の違和感を可能な限り軽減するために、指ではなくバイオリンの指板(弦の下にある板)上に銅箔を貼り、演奏者が弦を指板に押し付けることで抵抗値を測定し、位置情報を得るというシステムを考案した。その結果、弦自体の抵抗値が非常に小さいために、位置の違いによる抵抗値の差を十分確保できないことがわかった。そこで、市販の接触位置センサーをバイオリンの指板上に貼付け、抵抗値から位置の測定を行うこととした。その結果、十分な抵抗値の変化を得ることができた。 演奏者の弦を押す位置の測定には1ミリ単位(もしくはそれ以上)での計測精度が求められる。その精度を実現するためには精確に定格電流を供給する必要がある、そこで、精度が0.1%以内のICを用いた電源システムを試作した。現在、実験者や数名のバイオリン経験者を用いた予備実験を行い、データの確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた計測システムでは、精確な押弦位置を測定することが難しいということがわかったため、計測システムを再考案した。そのため、本来であれば熟練者を対象とした実験を終えているところであったが、現在は新たに試作した計測システムの検討を行っているところである。今のところ数名ではあるがデータを取得し、データ内容に問題ないことを確認しており、まもなく本実験として熟練(プロ)のバイオリニストを対象とした計測実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた計測システムからの変更を行ったため、データの取得自体はやや遅れているが、データの精確性の確認をし次第、すぐに本実験にとりかかる予定である。今年度は熟練者のデータに加えて初心者のデータと、子ども用のバイオリンである分数楽器を使用した際のデータ取得を予定している。既にいくつかの音楽大学の専攻学科や一般大学のオーケストラに実験参加者依頼を行っており、データを取得するための環境は整っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に行うはずであった実験が実施に至らなかったため、実験参加者の謝金として準備していた分が次年度に繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額として計上した金額は前年度に未実施であった実験の謝金として使用する。
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