本研究では、表現遊びに着目し、児童から現れた動きを分析することにより、「個性的な動き」とはどのような動きかを明らかにすることを目的とした。舞踊専門家による質的な分析から「個性的な動き」を抽出し、その動きを量的に分析することで、舞踊経験のない指導者においても「個性的な動き」を見つけるための観点を得ることができると考えた。 表現遊びから現れた模倣の動きに関して、先行研究では児童の動きを質的な分析により「形骸模倣」、「誇張模倣」、「オリジナル模倣」の3つに分類しており、この「オリジナル模倣」が他の児童が行っていない独創的な動きであることから「個性的な動き」であるとした。先行研究では、その3つの模倣の動きを分類する観点が曖昧であり、「オリジナル模倣」がどのような動きなのか示されていなかった。そのため、「形骸模倣」、「誇張模倣」、「オリジナル模倣」の明確な観点を得るために実験を行った。対象はA小学校2年生の児童30名であり、動物の絵カードを提示し、児童が即興的にそのものになって動く実験である。その中から舞踊専門家による質的な分析と動作解析を用いた定量的な分析の双方により、模倣の動きを観察するための観点を見出した。 その結果、オリジナル模倣である「個性的な動き」の特徴として、模倣対象の直接的なイメージ動作はみられず、重心の上下動が大きく、体幹部の角度が水平に近い結果が得られた。さらに、「個性的な動き」には児童の創造性を感じ取らせる表現が含まれるものであった。つまり、「個性的な動き」は模倣対象の外観の特徴をそのまま捉えるのではなく、模倣対象から捉えた発想が動きになっていることで題材の形態を越えた動きになっている可能性があり、全身で多様な動きの変化をつけながら動いていることがわかった。
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