研究課題/領域番号 |
15K16431
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研究機関 | 仙台大学 |
研究代表者 |
岡田 成弘 仙台大学, 体育学部, 講師(移行) (60620771)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自然に対する態度 / 遠征型キャンプ / 自然感受体験 / 原生自然 |
研究実績の概要 |
平成28年度夏に、遠征登山を含む遠征型キャンプと、キャンプ場周辺での活動を行う滞在型キャンプの2つを実施した。さらに、キャンプに参加していない不参加者の3群から、自然対する態度得点を収集した。さらに、遠征型キャンプ参加者が、キャンプ中どのように自然とのつながりを感じていたかを測定するため、自然感受体験得点を毎日測定した。 平成27年に取得したデータとあわせて分析したところ、遠征型キャンプ参加者の自然に対する態度得点は、キャンプ不参加者よりも、キャンプ1ヶ月後に有意に高くなっていた。因子ごとの分析では、肯定的感情因子とキャンプ因子で、遠征型キャンプの方が有意に高くなっていた。遠征型キャンプと滞在型キャンプの比較では、遠征型キャンプの自然に対する態度得点はキャンプ直後に有意に向上し1ヶ月後まで持続したが、滞在型キャンプの参加者の自然に対する態度は変化しなかった。また、遠征型キャンプの参加者の自然に対する態度は、滞在型キャンプ参加者と比べて、キャンプ直後に有意に高くなり、その差はキャンプ1ヶ月まで続く傾向にあった。因子ごとの分析では、キャンプ因子と環境倫理因子において、遠征型キャンプ方が有意に高くなった。以上の結果から、遠征型キャンプが小中学生の自然に対する態度を向上させることが明らかとなった。 同様に、平成26年から平成28年にかけて取得したデータをあわせて、遠征型キャンプ参加者を自然感受体験得点によって高体験群と低体験群に分けて比較したところ、高体験群の方が低体験群よりも自然に対する態度が有意に向上し、その差は1ヶ月まで維持された。現在、因子ごとの分析を行っている。 また、量的アンケートだけでは明らかにできない、個人個人の体験や変化を検討するため、平成29年春にインタビュー調査を実施した。今後は、修正版グラウンデッドセオリーを用いて、インタビューデータを分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最初は、登山というプログラムが自然に対する態度に及ぼす効果を検討する予定であったが、研究を進めていくうちに、遠征登山を含む遠征型キャンプが総合的に自然に対する態度を向上させていると考え、実証することができた。これは、最初にたてた仮説より、現実的な結果となった。 また、自然とのつながりを感じるような体験が重要であるという仮説をたて、自然感受体験に着目して調査を行った結果、仮説通りその効果を実証することができた。 上記の2つの実証によって、最初の目的は概ね達成できたが、研究を進める上で新たな課題が見つかった。それは、キャンプ参加者の平均的な態度変容についてはある程度実証することができたが、個人の体験や変化のプロセスについて明らかにすることである。それができれば、実践現場でより具体的な指標として貢献することができる。そこで、最初の計画にはなかったが、キャンプ半年後のインタビュー調査を行い、修正版グラウンデッドセオリーを用いた分析を行うことにした。16名からインタビューのデータを得ることができ、これから分析を行う。この追加調査によって、最初の計画よりも、より現実的な結果が得られることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、遠征型キャンプが自然に対する態度に及ぼす効果について論文としてまとめ、投稿する(現在、執筆し、5月に投稿する予定)。 さらに、自然感受体験が自然に対する態度に及ぼす効果をさらに細かく分析し、これも論文として投稿する。 16名へのインタビュー調査は終了したので、これから分析を行い、個人のインタビューデータから遠征型キャンプが自然に対する態度に影響を及ぼすプロセスについての概念、カテゴリーを分析ワークシートを用いて抽出し、結果図・ストーリーラインを作成する。これも、論文として投稿する。 最終的に、3種類の調査をまとめ、遠征型キャンプが自然に対する態度に及ぼす効果を、総合的に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析の過程で新たに分析ソフトが必要になり、次年度予算から10万円を前倒しで請求したため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文執筆に必要な費用(投稿費)や発表のための出張費用として使用する予定。
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