本研究では、プログラムと参加者の体験に着目して、キャンプが参加者の自然に対する態度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 まず、遠征登山を含んだキャンプと、遠征登山を含まないキャンプ及びキャンプ不参加者を比較し、遠征登山を含んだキャンプの方が自然に対する態度を向上させることが明らかになった。特に、自然に対する肯定的感情や、キャンプに対する価値観に向上が見られた。 次に、キャンプ中の「自然へのアタッチメントを感じる体験」に着目し、自然に対する態度との因果関係を検討した。構造方程式モデリングによって、自然へのアタッチメントを感じる体験から自然に対する態度の変化への因果関係モデルが証明され、0.32というパス係数が示された。また、自然へのアタッチメントを感じる体験高群は、低群より自然に対する態度が向上し、特に自然に配慮する精神における向上が見られた。 さらに、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、自然へのアタッチメントを感じる体験の詳細と自然に対する態度に影響を及ぼした過程を検討した。その結果、自然へのアタッチメントを感じる体験は、日常にはない自然との直接的ふれあいが引き起こしており、自然への親愛・つながり・敬意・畏れを感じるという4つの体験によって構成されていた。自然へのアタッチメントを感じる体験によって、自然への肯定的感情、自然との精神的つながり、自然認識の深まり、畏敬の念、自然と人間の関係性の考慮という、新しい感覚や認識が芽生え、日常の要因に影響を受けながら、自然に対する積極的な姿勢に発展していくことが明らかになった。 以上の結果から、遠征登山を含んだキャンプが自然に対する態度を向上させること、その中でも自然への親愛・つながり・敬意・畏れを感じるような自然へのアタッチメントを感じる体験をすることが自然に対する態度を向上させていることが明らかになった。
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