研究課題/領域番号 |
15K16434
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
杉山 真人 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 准教授 (00442400)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 幼児 / 捕捉行為 / タイミング |
研究実績の概要 |
当該年度の研究課題の目的は幼児を対象に,捕捉行為中の頭部の向きに着目し,ターゲットに対するタイミング調節の特性を実験的に検討することであった. そこで年少から年長までの幼児を被験者として第1実験を行った.被験者前方に設置したスクリーンにターゲット(光刺激)を投射した.課題はターゲット(被験者からみて右から左に移動する)を視覚的に追従し,スタート地点から到達地点へ移動するとともに,ターゲットの到達と自身の移動完了を一致させることであった.実験試技の映像から,被験者の前頭と後頭の座標値を算出した.ターゲットと到達地点を結んだ線をP,前頭と後頭を結んだ線をQとした時, PとQがなす角を頭部が向かう方位角(Head Direction Angle: 以後HDA)と定義した.このHDAはターゲット及び被験者がともに到達地点に向けて移動している時,被験者がターゲットの仮想軌道からターゲットの時空間的変化を予測するための知覚的情報といえる.ターゲットの移動速度は先行研究等を考慮して,低速,中速,高速の3条件を設定した. 成熟したヒトのタイミングの特徴と比較するために,第2実験として成人被験者を対象とした同様の実験を行った.そして現在,これらの実験で得られた結果を分析中である.今後,HDAがタイミング調節に果たす役割を発達的変化と関連づけて考察していく予定である. このようにHDAを定義し2つの実験でデータを収集することができた点は,タイミング調節を発達的変化と関連づけて詳細に分析するために意義がある.次年度にHDAの発現が,事前見積もりの結果生じるのかどうかを明らかにすることによって,幼児のタイミング調節をより深く検討する予定である.当該年度で得られたデータはその基礎的データと位置づけることができる.従って,次年度以降の研究の展開のために極めて重要なデータを得ることができたといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
幼児を被験者とした実験を当初の計画通り遂行することができた.しかし,本研究を公開するにあたっては成人被験者を対象とした実験から得られるデータを追加することが妥当であると判断し,成人を被験者とした追加実験を遂行した.また,データの解析に予定よりも多くの時間を要している.これらのことから論文等による研究成果の公開のための計画に若干の遅れが生じているため.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験では同一条件を連続的に呈示し,その度次の刺激呈示条件を行うという手続きで実施した.この実験での方法論的限界は,次に呈示される速度条件を被験者が事前に予期できる点にある.実際の運動場面を想定した場合,運動実行者が外部環境への応答を行うときには必ずしも外部からの刺激を予測できるとは限らない.少なからず刺激の呈示前に事前見積もりを行っている可能性が排除できないということである.そこで今後は被験者にターゲットの移動速度を事前に予測できないように毎試行異なる刺激呈示の手法を用いることにより,HDAを利用したタイミング調節方略が事前に見積もられて実行されているのか,あるいは運動実行中に運動修正を行いながらターゲットを捕捉しているのかを明らかにする予定である.このことにより,幼児のタイミング調節の方略にHDAがどのような形で貢献しているのかを明らかにし,より詳細な分析を試みる予定である.
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