研究実績の概要 |
最終年度は,小学生の疾走動作を対象に,体育を専門としない小学校教員および短距離走の指導者における観察評価の観点を明らかにし,両者の比較を行うことで,小学校体育の場で適用可能な疾走動作の観察ポイントについて検討した.その結果,以下の3つのことが明らかになった.①指導者と小学校教員では,観察の観点が異なり,指導者は下肢や上半身と下肢との関係性,小学校教員は,上半身や全体の印象に着目している.②指導者は特に「接地時の遊脚の位置」,「接地時の重心の位置」,「脚の流れ」の3つの観点に着目していた.これらはバイオメカニクス研究で明らかにされた合理的な疾走動作を評価する項目と一致しており,「良い」動作や「改善が必要」な動作を見極めるうえでは,適切な観点であることが推察された.③小学校教員は,特に「腕振り」,「全体の印象」,「姿勢」に着目しており,これらは小学校学習指導要領解説やそれに関連する指導書の内容と一致していた.その中で,「腕振り」に関する内容は最も多く,バイオメカニクスの分析からも適切に評価できていた.しかし,指導者はほとんど「腕振り」に着目しておらず,「腕振り」の評価が低くても十分に疾走能力を発揮できる児童も多くいたため,疾走動作を評価する項目として適していない可能性が示された.また,「姿勢」については,小学校教員でも動きの変化を捉え易く,尚かつ合理的な疾走動作を評価できる観点の一つとして提案できる可能性が示された.
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