研究課題/領域番号 |
15K16438
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研究機関 | 中村学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
門田 理代子 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 助手 (40641866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動あそび |
研究実績の概要 |
研究2年目となる本年度は、前年度と異なる動作を組み込んだ運動を実施した。昨年度の調査により、カンボジアの子どもたちはボールを使用せずに音を出しながら飛ぶおもちゃを使って中当てのような遊びを行っていることがわかり、どの程度用具の操作能力を有しているのかを明らかにするため、大縄跳び用のとび縄や、フライングディスク、ボールなどを用いた運動活動を行った。これらの運動に関しては子どもたちの操作能力は授業として扱うのに十分な基礎的能力を備えていることが分かった。物資不足のカンボジアにおいて、日本から持ち込んだ運動用具はそれに触れること自体に強い興味関心を持っており、用具を用いての運動活動に対しては非常に積極的に取り組むことが明白になった。この実態を利用して、可能な限り活動には用具を取り入れた内容を組み込みたいと考えている。 その実態を踏まえ、中学生に対してはフライングディスクを用いた簡易的なアルティメットを実施したところ、やはり現地授業として成立できそうな様子を示した。アルティメットは、バスケットボールやアメフトなどの要素を備えた様々な運動能力・体力の求められる種目である一方、施設環境に乏しいカンボジア農村部においても十分に実施可能であると判断されるため、当初予定していなかった中学生への体育指導書としてアルティメットの提案を検討したいと考えている。 小学校の児童に向けては、発達段階に合わせて低学年には用具を使わない鬼あそび、中学年には一部用具を用いた鬼あそび、高学年には用具を用いた運動遊びを提案したいと考えている。 当初は最終年度に向けて、現地の教員に主体的に動いてもらう現地教員主導型の形態を取る予定ではあったが、子ども含め現地の人々の理解度を最優先に考え、日本人スタッフ主導の形での指導を視野に入れて進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は二度の渡航の中で、一度目には現地において日本の学生とともに協働での運動指導、そして二度目の渡航においては現地教員主導による運動指導を計画していた。しかし、現地教員の特に体育授業における統率力は低く、指導するレベルに至らないという実態が明らかとなった。 また、体育授業をほとんど学んでこなかった現地教員にとって、運動指導に対する抵抗感は高く、運動会などの単発的な活動の運営に関しては協力を得られるものの、日常的に運動指導を行っていく授業としての活動に対しては、積極性をあまり感じられないという実感があった。そのため、予想していた形態での指導を変更する必要が出てきた。現地教員主働型にこだわらず、まずは内容を理解してもらうこと、そして運動指導に対する意識を変えていくことを根底に今後の活動を進めていきたい。
また自身の体調不良により、本年度二度目の渡航を断念せざるを得なかったことも当初の研究計画から遅れる原因となっている。体調面に関しては現在も治療を行っており、今後も研究活動への影響は多大なものとなると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度前半に関しては日本国内での指導内容の見直しおよび指導書の作成に重点を置いて進めていきたいと考えている。特に現地教員が体育授業に対して苦手意識を抱くことのないように配慮し、簡潔な内容の運動あそびを選択するとともに、理解度が高く、運動活動に対して積極的な姿勢の子どもたちが主体的に取り組みやすいものに限定して内容を精査したい。そのためには、これまでの調査で感触のよかった運動活動をふり返りながら種目を選択し、現地の実態に見合った形に調整をしたうえで現地教員へ提示したいと考えている。 現在、カンボジアでは2021年開催予定の東南アジアスポーツ大会に向けて、サッカーおよびバレーボール等の球技を中心に、子どもたちへのスポーツ振興を進めている。そのような状況を利用し、特にこれらの運動に必要な動きの要素を取り入れた活動を、特に小学校高学年以降の子どもたちには実施したいと考えている。しかし一方で、学校教育全体の中の体育振興のため、低学年および幼児を中心に運動あそび活動を充実させていきたい。そのため、小学校中学年以前の子どもたちへのあそび指導を中心に検討していきたいと考えている。
年度後半には現地へ渡航し、現地教員へ指導書と照らし合わせながら運動あそび指導を実施していく。まずは先生たちへの内容理解を徹底すること、状況に応じて体育授業としての成立ではなく、子どもたちが日常的に楽しめる運動遊びの提案ということで、日本人スタッフによる子どもたちへの直接指導の様子から現地教員への理解を求めることも検討しておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に体調を崩して通院をしていたため、計画していた段階までの研究活動が実施できなかったことが原因と考えられる。平成28年度使用見込みであった旅費に関しては、平成29年度の活動の中で、通訳費、翻訳料を充実させる形で使用していくことでより充実した研究を実現できるよう努めたい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の渡航においては、国内での詳細な翻訳および、現地活動充実のための優秀な通訳者の確保が求められる。平成28年度に生じた差額に関しては、指導書をより充実させるという形で、現地での理解が高められるようにすることで、本研究の成果として還元したいと考えている。
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