研究課題
平成29年度は,CFD解析により,サッカーボール表面近傍の空気の流れ(後流)を可視化し,回転及び無回転サッカーボールに働く抗力,揚力,横力(マグナス力)やボール周りの流れを,可視化・解析することにより,その空力特性や渦構造を明らかにした.CFDにおける回転及び無回転ボールの後流の支配的渦構造として,頻繁にラージスケールの渦対が観察された.無回転及び低回転ボールの渦対は,進行軸回りの回転や崩壊など,不安定に大きく変動する傾向を示していた.この不安定な変動は,無回転及び低回転ボールに生起するナックリング・エフェクトの原因の一つになっていると考えられる.一方,回転ボール後流の渦対は,無回転のそれに比べて安定している傾向が観察された.).これらのことから,回転ボールにおける横力係数のラージスケールの変動は,無回転のそれに比べて小さいと考えられる.そして,このボール後流に形成されるラージスケールの渦対は,翼端渦と同様に,揚力(横力)の発生源になるとされ,回転ボールの後流のラージスケールの渦対が安定していることが,その揚力係数(横力係数)が安定している原因の一つになっていると考えられる.このボールの連続回転は(回転数が低いと非定常性が励起される),外流と同方向側の境界層の剥離が,反対方向側の剥離に対して定常的に遅れ,剥離ラインの不規則な変動を抑制する働きを発現し,ラージスケールの渦対が安定している大きな原因の一つになっていると思われる.また,平成29年度は,現代バレーボールの空力特性と飛翔特性について風洞実験を用いて検討した.本実験の結果によると,現在オリンピックや国際リーグで使用中であるミカサの新デザインバレーボールは,モルテンボールや典型的なモデルのボールに比べ,相対的に飛距離が少し短いが,ボール向きによる軌道変化が小さく比較的に安定した軌道であると判断できる.
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