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2015 年度 実施状況報告書

オリンピック競技大会のレガシーに関する批判的検討

研究課題

研究課題/領域番号 15K16445
研究機関筑波大学

研究代表者

荒牧 亜衣  筑波大学, 体育系, 特任助教 (30507851)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードオリンピック・レガシー / 1964年東京大会 / オリンピック・ムーブメント / オリンピック・ミュージアム / 2012年ロンドン大会
研究実績の概要

今年度は研究実施計画に基づき、1964 年東京オリンピックにおける有形と無形のレガシーの関係性の整理と哲学的な方法を用いた分析枠組みの構築を目的として、主として以下の研究を行った。第1に、1964年東京オリンピックのレガシーに関する資料の分析を行った。特に、霞ケ丘国立競技場、代々木国立競技場、東京の魔女のレガシーについて有形と無形のレガシーの関係性について検討した。第2に、JOA主催のオットー・シャンツ氏の講演会に参加し、オリンピックに関する思想史、社会学的研究の第一人者であるシャンツ氏と、オリンピック・ムーブメントにおけるレガシーについて、基本的な考え方や将来展望について情報交換を行った。第3に、日本体育学会に参加し、オリンピック研究に関する国内の最新情報を入手するとともに、特に体育哲学専門領域の会員と本研究の分析枠組みの構築について意見を交換した。第4に、日本で開催された東京、札幌、長野のレガシーについて資料収集を行うために、国内3箇所の関連ミュージアム(秩父宮記念スポーツ博物館、札幌ウィンタースポーツミュージアム、長野オリンピックミュージアム)を訪問し、資料収集を行った。第4に、招致段階からレガシーを計画することが初めて義務付けられた2012年ロンドン大会について、有形、無形レガシーを調査し情報収集を行った。以上の研究成果により、次年度に向け、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーについて批判的検討を行うための分析枠組み構築のための基礎資料を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画に基づき、初年度は、分析枠組みの構築を目的に、研究課題1として設定した有形と無形のレガシーの関係性に関する基礎資料、関連情報の収集を中心に実施した。まず、霞ケ丘国立競技場と代々木国立競技場のレガシーの検討に関しては、現地調査を行うとともに、前年度より開始していた予備調査の結果を踏まえ、レガシーとしての共通点や相違点について分析を行った。次に、東洋の魔女のレガシーについても、前年度から着手した予備調査の結果を踏まえ、大会報告書や関連書籍の分析を行い、通時的、共時的な視点からレガシーとしてどのように意味付けられるかについて考察を行った。また、有形と無形のレガシーの関係性に関する分析枠組みの構築については、実体的な概念と関係的な概念という枠組みだけでなく、計画概念としての意味合いが付与されたレガシーと過去の大会に関する評価について言及する際のレガシーを明確に区別して論ずる必要性があることが示唆された。そこで、前者の代表的事例として考えられる2012年ロンドン大会に着目し、招致段階から構想された有形、無形のレガシーの現在について現地調査を行った。2012年ロンドン大会は、開催候補都市が提出する開催概要計画書にレガシー計画を記載することが初めて義務付けられた大会である。特に、競技施設が集中し、現在はオリンピック・パークとして活用されている東ロンドン地区は有形のレガシーが新たな無形のレガシーを長期的に創造する事例であることが確認された。さらに、後者の事例として、日本でオリンピックを開催した3都市にあるミュージアムを訪問した。これらの都市にはレガシーとして評価されている有形、無形のものが正負ともに存在していたが、非計画的なものが数多く含まれていた。また、オリンピック・ムーブメントへの貢献という視点から、特に無形のレガシーについて再評価する必要があることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

今後は、有形のレガシーと無形のレガシーの関係性を明らかにするために、分析枠組みの構築とその妥当性の検証を行い、2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシーについて批判的検討を行う。これまでの研究成果により、有形と無形のレガシーの関係性について明らかにするためには、実体的な概念と関係的な概念としてのレガシーについて検討するだけでなく、計画概念としての意味合いが付与されたレガシーと過去の大会に関する評価について言及する際のレガシーについて明確に区別して議論する必要があることが明らかとなった。そこで、2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシーについての批判的検討に向けては、特に、1964年東京大会を事例とした研究成果をもとに構築する分析枠組みの妥当性についても検証を行う。また、国際オリンピック委員会は、レガシーについて開催都市、開催国、周辺地域へのレガシーとオリンンピック・ムーブメントへの貢献に関するレガシーの二つに分類することができると述べているが、特に後者についてより精緻に分析を試みる。現在では、オリンピック競技大会以外のさまざまなスポーツイベントの文脈においてもレガシーという概念が用いられるようになってきている。しかしながら、オリンピックにおけるレガシーについて考察を進めていくためには、オリンピック・ムーブメントへの貢献に関するレガシーに着目する必要がある。さらに、オリンピック・ムーブメントへの貢献に関するレガシーの多くは無形のレガシーであることもIOCによって指摘されており、有形と無形のレガシーの関係性を明らかにするにあたって重要な視点であると考えられる。以上の方法によって研究を進めていくとともに、必要に応じて国際スポーツ哲学会や海外のオリンピック研究センターの研究者と意見交換の場を設け、オリンピック・レガシーの再概念化を試みる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] オリンピック・ムーブメントとこれからのミュージアムを考える2015

    • 著者名/発表者名
      荒牧亜衣、和田恵子、鈴木恵千代、土屋龍一郎、白取史之、井上裕太、小杉卓正、渡辺創
    • 学会等名
      日本オリンピック・アカデミー第38回JOAセッション
    • 発表場所
      武蔵野大学(東京都江東区)
    • 年月日
      2015-12-06

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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