本研究では、1964年東京大会を事例に有形と無形のレガシーの関係性について解明し、実体的な概念と機能的な概念としてレガシーをとらえ直すことを試みた。また、方法として、大会招致の文脈において用いられる計画としてのレガシーと、過去の大会に対して用いられる評価としてのレガシーを明確に区別して論じることについても確認した。有形のレガシーの多くは、実体的な概念として把握される。一方で、有形のレガシーは機能的な概念として据えられることによって、より長期的なものとして存在する可能性が高い。機能的な概念としての有形のレガシーをより確実に認識させるものこそが無形のレガシーの役割であることが示唆された。
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