研究課題/領域番号 |
15K16449
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
加藤 彩乃 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (50736501)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 障害者 / 運動習慣 / 促進要因 / 阻害要因 / 支援方法 / 障害理解 |
研究実績の概要 |
本研究は、障害の有無別に運動実施の促進要因と阻害要因を明らかにすることで、障害のある人の運動習慣を形成するために必要な要素を解明することを目的としており、将来的には、障害のある人への運動実施プログラムとして社会に還元することをゴールとしているものである。 今年度は、本研究のフレームワークを構築するための情報収集に多く時間を費やした。まず、「障害者のスポーツ・運動実施」「運動スキル発達」「余暇」「QOLの向上」などのテーマを中心とした学会やシンポジウムに参加して、研究動向を確認するとともに、情報収集を行った。そして、これまでの研究から一般的な運動実施の阻害要因や運動習慣形成に向けたプログラム報告についての情報収集をした。これらの成果から、障害のある人が運動を日常的に実施するためには、「社会の中での受け入れ」が重要であることを再確認した。 そこで、当初の研究計画には無かったが、障害のある人とのスポーツ交流を通した障害理解について、大学生を対象とした事前調査を実施した。その結果、(1)障害のある人との関わりの経験度によって、障害のある人や、障害のある人がスポーツを行うことに対する意識や認識が異なり、(2)関わりの経験を積むことで差別や偏見意識が改善されることが示された。さらには、スポーツ交流の経験を通して、(3)障害のある人との関わり方について、学生のコミュニケーションの有能感が高まることも分かった。そして、これらの変化には、(4)障害の有無を超えて、スポーツを一緒に楽しむ中で得られるスポーツの価値への気づきや、障害のある人との関わりの成功体験等に支えられていることが分かった。 この結果をもとに、今後の研究の新たなキーワードとして、スポーツの価値、関わり経験、障害理解、有能感等が追加された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の今年度計画では、本研究の中核となるアンケート調査及び第一段階のデータ分析を実施している予定であった。しかし、調査に向けた情報収集をする中で、「障害のある人も運動を実施しているという状況が社会の中で理解されているかどうか」が一つの鍵であると考えられた。そこで、計画段階には無かった、スポーツを通した障害理解についての調査を実施し、今後の研究資料を得ることとした。 そのため、アンケート実施の時期が遅れてしまったが、調査の指標となる重要な成果を得ることができ、これらの内容を踏まえたアンケートの実施に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の目的を達成するために、当初の実施計画に戻り、運動の価値観や阻害要因、促進要因に関するアンケートの実施と障害の有無別の分析を行う。また、アンケートでの情報が得にくい場合や、さらに具体的な要因を探る場合には、研究の進捗に応じてインタビュー調査を実施する計画である。 本研究はアンケート調査を実施し、視点をいくつか変えて分析を行う中で、障害のある人特有の運動実施阻害要因と促進要因を明らかにするものである。そのため、アンケート実施が遅れたものの、分析及び評価を平行して行うことで、最終年までに成果を出せるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は調査に関する情報収集とそれに伴う、事前調査の実施から、当初予定していたアンケート及びインタビュー調査を実施しなかった。そのため、用紙やICレコーダー、郵送関係備品、調査にかかる旅費等の支出が無かったため繰越額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、平成28年度請求額と合わせて、アンケート及びインタビュー調査の実施のために、(1)データ収集にかかる備品購入、(2)データ分析に関連する備品購入、(3)調査にかかる旅費、(4)研究資料購入、(5)学会の参加及び発表費に充てたいと計画している。
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