最終年度は昨年度まで行なってきた20世紀末イングランドにおけるプロ・フットボールのガバナンスについて、特にFootball Task Forceにおける議論に焦点を当てながら史料調査・分析を行なった。Football Task Forceにおける議論を細かく分析すると、Football Task Forceを分水嶺としてFootball AssociationやFootball Leagueが主導するリーグレベルでのガバナンスが機能不全を起こす一方で、サポーター代表に基づくクラブレベルでのコーポレート・ガバナンスの導入が進んでいったことが分かった。 また、Football Task Forceには従来の研究者が強調してきたようにサポーター団体だけでなく、ロンドン大学バークレー校Football Governance Research Centreに所属する経営学者など研究者が関与し、議論の大きな影響を与えたことが明らかになった。 昨年度までの調査で1990年代初頭のプレミアリーグ改革においても経済学者や社会学者など研究者の関与が重要であったことを明らかにしてきたが、世紀転換期のガバナンス改革においては従来の研究者とは異なるタイプの研究者が改革に関与していた。MichieやHamilら世紀転換期に新たに改革に関与するようになった研究者達は、ブレア政権の掲げるThird Wayに共鳴しつつ、プロ・クラブの運営に現代的なコーポレート・ガバナンスを導入していくとともに、スポーツ・ガバナンスなど新たな学問領域の創出に貢献することで、間接的にもイングランドのプロ・フットボールのガバナンスのあり方を変えていく事に繋がったといえる。 なお、以上の成果については西洋史読書会大会において報告した。
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