研究実績の概要 |
パワートレーニングは、各挙上で最大パワー(速度と力)を出し切る事により効果が増大する。その為、スピード系パワートレーニングでは、ベンチプレス投げやスクワットジャンプのような放物動作が推奨されている。これによりコンセントリック局面終盤で生じる挙上減速を最小限にする事が出来る。一方、トレーニング時のパワー出力低下は疲労(代謝性アシドーシス)でも生じるため、これを軽減することでパワートレーニングの効果を増大できると考えた。そこでH29年度の研究では、運動セット間の休息時にハイパーベンチレーション(HV)を行い、呼吸性アルカローシスを誘導する事でパワー出力の回復を促進できるかについて検証した。
13名のパワー系学生アスリートが最大エフォートによるベンチプレス投げとスクワットジャンプを、スミスマシンを用いて40% 1RMの負荷にて12レップス×5セットずつ行った。セット間休息はベンチプレス投げでは3分、スクワットジャンプでは5分とした。コントロール条件(CON)では休息時間で通常呼吸による回復をし、ハイパーベンチレーション条件(HV)では、3rd, 4th, 5thセット開始直前30秒間でハイパーベンチレーションを行った(換気量: 114~116 l/min, 一回換気量: 2180~2235 ml, 呼吸頻度: 52~55 回/min, 呼気終末二酸化炭素分圧 [PETCO2]: 18~21 mmHg)。各レップにおけるコンセントリック局面での関節角速度(ベンチプレス投げ: 肘関節, スクワットジャンプ: 膝関節)を計測し、両呼吸条件間で比較した。30秒間のHVにより、血中pHは有意に上昇し(+0.061~0.077, P < 0.001)、PCO2は有意に低下した(-6.7~8.4, P < 0.001)。しかし、疲労による関節角速度の低下はCONとHV条件間で差が観されなかった。
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