研究課題/領域番号 |
15K16469
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹村 瑞穂 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (70634351)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 競技スポーツ / 遺伝子ドーピング / エンハンスメント / 身体倫理 / スポーツ倫理 |
研究実績の概要 |
平成27年度に申請した「科学研究費若手B」で採択された研究テーマは、「遺伝子ドーピングに関する倫理学的研究:原理的研究から行動規範の策定まで」である。競技スポーツ界における遺伝子ドーピングをめぐる様々な問題の解決を求め、倫理学的立場から研究を行うものである。 とくに、①倫理学的枠組みの構築と、②原理的研究を土台とした行動規範の提案を視野に入れて研究を進めている。具体的に研究期間内に明らかにする諸課題として、以下の五つを挙げている。すなわち、1)最新の遺伝子ドーピング技術とそれをめぐる倫理的議論の動向、2)遺伝子操作技術を用いたエンハンスメントに対する意識、3)遺伝子ドーピングをめぐる、倫理学的問題に関する諸問題への応答 、4)遺伝子ドーピングをめぐる、スポーツ倫理学的問題に関する諸問題への応答、5)スポーツ界における遺伝子ドーピングの行動規範の方向性、の五つである。 上記五つの課題のうち、平成27年度においては、1)最新の遺伝子ドーピング技術とそれをめぐる倫理的議論の動向について、基礎的研究を終えることができた。特筆すべき成果は、これまで遺伝子ドーピングの議論において中心であった英語圏の議論だけではなく、ドイツ語圏の文献を整理することができたことである。課題の2)の意識調査については、研究代表者が産休のために海外出張にいくことが出来ず、当初予定していた北米の大学におけるアンケートの実施は見送らざるを得なかった。しかし、その準備として、アメリカ・カナダの大学の教員と研究に関する意見交換を行い、アンケート実施のための準備を行うことができた。 なお、業績としては、平成28年度にミネルヴァ書房から出版される学術図書『よくわかるスポーツ倫理学』の「ドーピングの倫理学」について執筆を行い、遺伝子ドーピングについて最新の知見と倫理議論を盛り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、妊娠期間中に長期入院をし、また出産後の産休取得のために、なかなか思うように研究が進まないことが認められた。その中で、文献研究や基礎的研究など出来ることは進めてきた。 とくに実施できなかったことは、研究計画に挙げていた、海外の大学での研究交流や、国際学会の出席および国際学会での口頭発表である。これらについては見送らざるを得なかった。たとえば、平成27年度には、国際スポーツ哲学会会長であり、アメリカ・リンフィールド大学の准教授である、Jesus Ilundain氏の助言や協力を得て、当該大学を中心に、遺伝子ドーピングに対する意識調査も実施する予定であった。しかしながら、これも連絡を取り合って準備を進めてきたものの、実際に大学に訪問して意識調査を行うことは、次年度以降に見送ることとなった。 今後は、育児との両立を図りながら、なるべく研究計画に沿う形で研究活動を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を進めていくうえで課題となるのは、やはり、育児との両立をしながら研究研究活動を実施していくことである。そのための対策として、1年間、研究期間を延長(平成28年度を研究活動中止とし、平成30年度まで研究期間を延長)する制度を利用した。当該制度を活用し、研究計画書に明記した諸課題については、延長した研究期間内に実施していきたい。 産休・育休のため、平成28年度は研究活動を一時中止するものの、平成29年度の具体的課題としては、平成27年度にインプットした内容を、学会発表、投稿論文という形でアウトプットしていくことである。まず、平成27年度に整理した最新の遺伝子ドーピングの動向を、特にドイツ語圏の文献について焦点を当て、国際学会で発表、論文の投稿を進めていきたい。それと併行し、実践的なレベルにおける遺伝子ドーピングに関する行動規範の策定にむけて、基礎的研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、妊娠よる長期入院および出産準備のため、海外出張(国際学会等)に参加することが困難であった、したがって、直接経費のうち、海外出張に充てる予定であった旅費を使用できなかったために、次年度使用額が発生したものと思われる。 また、海外での大学での遺伝子ドーピングに関する意識調査に関する人件費を確保していたが、これについても平成27年度は上記理由において見送らざるを得なかった。したがって、当初確保していた人件費も使用できなかったことが原因として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
産前産後の休暇、育児休業による研究の中断を、平成28年度は申請している。平成29年度からまた研究活動を実施するため、当初の研究計画に沿う形で予算も使用していく。 平成27年度に使用しなかった、国際学会の経費や、海外大学での研究に関わる経費は、中止するのではなく、平成29年度、平成30年度において引き続き実施する予定である。これについては、協力している海外の研究者とも合意している。したがって、平成29年度および平成30年度における直接経費に充当し使用していく予定である。
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