本研究のタイトルは、「遺伝子ドーピングに関する倫理学的研究:原理的研究から行動規範の策定まで」であり、競技スポーツ界における遺伝子ドーピングをめぐる様々な問題の解決を求め、倫理学的立場から考察を深めた研究である。 具体的には、2000年以降、競技スポーツ界の重大な懸念事項として顕在化した「遺伝子ドーピング」問題に対し、①倫理学的枠組みの構築と、②原理的研究を土台とした行動規範の提案を視野に入れた研究である。「①倫理学的枠組みの構築」とは、遺伝子ドーピングの倫理学的諸問題を明確にした上で、各々について道徳的判断を行い、スポーツ独自の文脈に照らし合わせつつ、行為の是非の根拠と許容範囲を具体的に示す原理的研究のことである。また、「②原理的研究を土台とした行動規範の提案」は、遺伝子操作技術がスポーツ界から一律に排除されることを防ぎ、適切な当該技術の恩恵(例えば治療)を受けるためにも、極めて意味があると言い得る。 研究実績としては、科学研究費採択期間中に、学術論文の掲載、国内外での学会発表を遂行した。また、特筆すべき事項として、国際ワークショップの開催が挙げられる。2019年3月に、「遺伝子ドーピングに関する国際ワークショップ」を早稲田大学において開催し、国内外の研究者と当該研究の知見を共有するとともに、学際的な研究ネットワークの構築に寄与した。当該ワークショップについては、国内では初めてのことであるとし、読売新聞第3社会面(1月8日朝刊)において紹介された。
|