本研究は,2011~2012年度の科研費若手研究(B)「100m走の加速と速度低下に及ぼす義足の影響」を発展した研究であり,100m走中の加速や速度低下を誘発する筋群の特定,さらには健足と義足で異なる疾走技術要因を明らかにすることを目的としている。 課題1. 加速局面や速度低下局面の疾走フォームを分析することで,健足と義足のキック動作が,加速や速度低下などの速度変化に及ぼす影響を明らかにする。この課題1を明らかにすることは,下腿切断の選手だけでなく,健常の選手に対しても有用な知見となろう。なぜなら,片足切断選手の分析は,推進力と疲労を生み出す健足と義足を有しており,レース中の速度低下を誘発するそれぞれの役割の違いを明らかにできるからである。 課題2. 健足と義足の表面筋電図を測定することで,加速と速度低下に影響する筋群を特定し,筋活動様式が速度変化とキック動作に及ぼす影響を明らかにする。これまで,高い疾走速度を獲得するには,体幹部(主に大腰筋や大臀筋)や大腿部の筋群の関与が指摘されてきたが,速度低下にもこれらの筋群が関与していることを示すことができれば,100m走よりも長い200m走や400m走のパフォーマンスを改善する知見を得ることにつながる。 現在の進捗状況は,2016年3月と2017年11月に実施した実験結果のデータ整理を行った段階にある。2017年の実験では,1,全力疾走中のピッチとストライドを計測。2,同時に無線の筋伝計を用いて,疾走中の筋伝図を測定。3,同時に,レーザー速度計を用いて,疾走速度を計測を行った。その後,実験動画のデータからピッチとストライドの変化を調べ,筋電データとの関連を分析した。
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