1.本年度は有酸素性作業能力と酸素動態の縦断的な関連性について、昨年度に得られた研究結果についてさらに検討を重ねた。その結果、高強度インターバルトレーニングによる有酸素性作業能力の向上は、大腿四頭筋(外側広筋、および大腿直筋)における漸増負荷運動試験中の脱酸素化応答の応答曲線に影響を及ぼさないことが明らかになった。この結果は、有酸素性作業能力の向上が大酸素化応答の不均一性に影響を与えないことを示している。 2.また、昨年度の実験とは異なる成人男性10名を対象に高強度インターバルトレーニングを実施し、外側広筋の浅層部、および深層部における漸増負荷運動試験中の脱酸素化応答の応答曲線について検討した。その結果、1.と同様に漸増負荷試験中の脱酸素化応答の応答曲線はトレーニングによる影響を受けない可能性が示唆された。 3.加えて、8名の成人男性を対象に通常酸素環境、および低酸素環境下で自転車による漸増負荷試験を実施し、外側広筋の脱酸素化応答の応答曲線について検討した。その結果、1、2.と同様に漸増負荷試験中の脱酸素化応答の応答曲線は酸素濃度の変化による影響を受けない可能性が示唆された。 以上の結果、および過去2年間の研究実績より、漸増負荷運動中の筋酸素動態の空間的な不均一性は有酸素性作業能力に対する影響は運動能力の高低や、測定部位の違いによる影響を受けない可能性が示唆された。本研究の結果は、脱酸素化応答を用いた有酸素性作業能力の評価が様々な部位における脱酸素化応答曲線の比較といった複雑な分析を必要とせず、脱酸素化応答の大きさによって十分評価できる可能性を示唆する。
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