本研究の目的は、ブラジル伝統格闘技カポエイラの基層理念「マリーシア」の意味を明らかにし、カポエイラの組手において「マリーシア」を具現化する身体技法を駆け引きの発生の観点から読み直すことである。得られた結論は次の通りである。①「マリーシア」はラテン語のmalitia(悪徳)を語源とし、カポエイラの実践過程において「マリーシア」に肯定的な意味合いが含意されたと推測される。②カポエイラの組手において既存の技に、「裏をとる」「待つ」「方向を変える」の3つの目的が加わることで「マリーシアを伴う技」として駆け引きが可能になる。また「マリーシア」の具現化にカポエイラ独特の足運び「ジンガ」が重要な役割を担う。
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