研究課題/領域番号 |
15K16484
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研究機関 | 国際武道大学 |
研究代表者 |
荒川 裕志 国際武道大学, 体育学部, 准教授 (20591887)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / スプリント / 陸上競技 / 野球 / スタートダッシュ / 動作分析 / モーションキャプチャ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年度に実施した実験に引き続き、大学生陸上競技選手10名および大学生野球選手10名を対象とした実験を実施した。 本実験は形態測定、筋力測定、および動作分析実験から構成されている。形態測定は、生体バイオインピーダンス法(Inbody730)による体組成測定および四肢長・身体各部位周径の計測を行った。筋力測定については、等速性筋力測定装置(BIODEX)による膝関節伸展・屈曲筋力測定および股関節伸展・屈曲筋力測定を行った。動作分析については、モーションキャプチャシステム(VICON MX、VICON社製)および床反力計(Kistler社製)によるスプリント動作の実験を行った。動作分析実験における反射マーカー貼付位置は全身33部位とし、立位からの全力での加速動作を3歩目まで撮影し、得られた三次元座標から重心および下肢三関節のキネマティクス変数をプログラミングソフトウェア(MATLAB)によって算出した。さらに、2歩目については床反力計を用いて地面反力を計測した。 全ての分析が完了していないため、以下では現時点で得られている主要な結果および考察を述べる。まず、地面を後方へキックする際の支持脚の動きについては、野球選手と陸上競技選手でいずれの項目についても有意差が認められなかった。一方、遊脚の動きについては、野球選手の方が陸上競技選手よりも身体重心位置に対して有意に前方に接地しているという結果が得られた。また、野球選手の方が接地時における膝関節が有意に伸展していた。これらの結果は、競技特性の違いに伴うスプリント動作の競技特異性を反映している可能性が考えられるが、他のパラメーターの算出や、他の属性の被験者を対象とした実験を更に進める必要があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の実施計画を作成した段階では、上半期中に陸上競技(短距離)および野球選手を対象とした実験を、下半期にラグビーおよびサッカーといった他競技の選手を対象とした実験を実施する予定であった。平成29年度の終了時点において、前者の実験のみが完了し、他競技選手を対象とした実験は実施できなかったため、自己評価を「やや遅れている」とした。 下半期に予定していた実験を実施できなかった理由はチームの年間スケジュールとの兼ね合いである。特に野球部の選手を対象とした実験を計画する際に、対象チームの監督・コーチとの間で日程を調節することに難航し、実際に実験を実施したのが平成30年初頭になってしまった。その結果、野球選手を対象とした実験の後に実施する予定であった他競技選手を対象とした実験を平成30年度中に完了できなかったというのが、達成度がやや遅れてしまった経緯である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度の実験で対象とした陸上競技選手(短距離)および野球選手以外に加え、さらに大学サッカー選手および大学アメリカンフットボール選手を対象とした実験を実施する予定である。申請者が所属する国際武道大学サッカー部は150人以上の部員を有しており、中にはスプリント能力の高いサッカー選手が複数含まれいることが期待されていることから、実験対象とする集団としては申し分ないと考えている。また、昨年までの計画では大学ラグビー選手を対象とする旨を記載したが、この対象選手を大学アメリカンフットボール選手に変更した。申請者が関わりを持つ早稲田大学アメリカンフットボール部は部員100名程度を有する大所帯であり、さらにアメリカンフットボールには短距離のスプリント動作に特化したポジションもあるため、本研究の実験対象として適切であると考えた。以上の選手を対象とし、平成29年度と同様の手法を用いて形態計測・筋力測定・動作分析の各測定を行う予定である。 また、同時並行でデータの公表作業も進める予定である。平成29年に実施した研究については、平成30年9月にニュージーランドで開催される国際スポーツバイオメカニクス学会大会(36th International Conference on Biomechanics in Sports 2018)にて発表するとともに、国際誌投稿に向けて準備する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」に記載したように、一部の実験を平成30年度に実施することになったため、国際学会出張のための参加費・旅費および論文執筆のための英文校正費・投稿料を昨年度は使用しなかった。記載した次年度使用額は、これらの用途で使用する計画である。
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