研究課題/領域番号 |
15K16486
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北嶋 康雄 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 特別研究員 (70734416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋再生 / タンパク分解系 |
研究実績の概要 |
我が国では超高齢社会をむかえ、筋萎縮に伴う運動機能低下が多くの要介護者を生み、社会問題化が加速することは必至である。筋量調節の分子メカニズムが解明されれば、筋萎縮の予防や改善につながる可能性がある。これまでに、主の蛋白分解系であるプロテアソーム機構は、筋量の維持に必須であることを明らかにしてきた。骨格筋では日常的に機械的な損傷が起き、再生するという過程が行われており、これらの筋損傷・再生により筋量の維持や増進につながっていると考えられる。今年度は、骨格筋特異的プロテアソーム不全マウスによる筋再生実験を行った。筋再生中には壊れた筋タンパク質などが新しい筋タンパク質に置き換わるため、タンパク分解系の不全マウスでは、筋再生不良を起こすと仮説をたてた。一般的に筋再生実験で用いられているカルディオトキシン(CTX: cardiotoxin)を前脛骨筋に筋注することで筋再生実験モデルとした。結果は、コントロールマウスと比較して骨格筋特異的プロテアソーム不全マウスでは、筋再生不良を呈した。筋再生中には多くのユビキチン化タンパク質が蓄積しており、骨格筋特異的プロテアソーム不全マウスではこれらが除去されずに骨格筋内に蓄積していた。筋再生後の筋横断面の免疫染色では、筋の繊維化が進んでいることも確認した。また、intactな骨格筋でのマイクロアレイのデータ比較では、骨格筋特異的プロテアソーム不全マウスにおいてコラーゲンを主とする結合組織の遺伝子発現や細胞周期関連の遺伝子発現が有意に変動していた。これらを踏まえ、さらに詳細に検討するために、筋再生に大きく寄与する骨格筋幹細胞の解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機関異動に伴い遺伝子改変マウスの搬入などで、研究環境のセットアップに多少時間がかかったが、今年度計画していた再生実験などを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋におけるタンパク分解系の不全は筋恒常性を破綻させることを、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析や筋再生実験などで明らかにしてきた。これまでの成果を含めて、筋再生に関わる筋幹細胞レベルでの更なる解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や受託解析費などが安価だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬および学会発表時の旅費、論文発表時の英文校閲、投稿料として使用する予定である。
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