本研究ではまず骨化性筋炎の動物モデルを新たに開発することに注力した。過去には煩雑性や安定性に問題があるものが報告されていたが、我々は筋薬理損傷誘導剤であるcardiotoxinと骨形成因子であるBMP2少量を混合した水溶液を1回注射することで、筋内異所性骨化を誘導できる画期的な動物モデルを開発した。組織学的な時間空間的変化を追うと、過去に報告されているヒト骨化性筋炎の経時的変化と類似しており、本モデルを臨床に応用していくことへの合理性を確認できた。さらに、病変の始まりは筋線維の間の筋内膜や周膜が線維増生することで起こっており、筋線維の再生より線維化が優勢となることで異所性骨化につながることが示唆された。 次にmicro-CTを繰り返し撮像することにより、同一個体でどのように病変が変化するかを明らかにした。成熟するに従い、外殻が三次元的に平滑化していくことが分かった。 最終年度では、このCT変化を誘導後16週まで長期観察し、自然治癒性等の評価をした。6週で成熟に達した後、病変の大きさやCa量や外観がプラトーであることが分かり、自然治癒しないモデルとして、介入実験にも有用であることが示唆された。また、三次元再構築像での表面平滑化が成熟の兆候と考えられた。 介入実験として筋肥大を促す遺伝子導入を試みた。これは、組織所見より筋再生<周囲線維化が異所性骨化の病態と示唆されたことから、筋肥大を刺激することで腫瘤が縮小しないか検討するものである。筋肥大抑制タンパクであるmyostatinを抑制するfollistatinを過剰発現させたが、対照群と比べ変化は見られなかった。求心性収縮のような、筋断面積の増大と筋肥大が望めるような刺激ではなかったことが一因と推測された。 このように、本研究では新たなモデルを開発し、臨床上有用な情報を多数得た。学会では有用な意見も頂戴しており、これを論文としていく。
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