研究課題/領域番号 |
15K16490
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研究機関 | 札幌国際大学 |
研究代表者 |
阿南 浩司 札幌国際大学, スポーツ人間学部, 講師 (00553851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 上肢運動 / 予測的姿勢制御 / 随意的筋弛緩 / 随意的筋収縮 / 筋電図 / 事象関連脳電位 |
研究実績の概要 |
日常生活の多くの場面では、外界の状況に応じて随意的な筋の収縮と弛緩により動作を行っている。高いスキルのスポーツ選手は、状況に合わせて筋の収縮と弛緩を効率的に制御し、動作の切り替え能が極めて高い。本研究では、上肢運動を筋の随意的収縮あるいは弛緩にて開始する選択反応課題を課し、状況に応じた応答の選択とそれに向けての運動準備について検討を行った。 若年成人7名は、手がかり刺激の2秒後に提示される命令刺激(S2)が標的刺激の場合に、立位にて三角筋中部線維(MD)の収縮にて上肢を挙上する収縮条件と、弛緩にて上肢を降下させる弛緩条件を行った。上肢運動の範囲は、肩水平位とその10㎝下の位置との間とした。いずれの条件も実験に先駆けて10回の練習試行を実施した。 弛緩条件では7名中2名の被験者は肩関節内転筋の収縮にて上肢を降下させており、他の2名は内転筋の活動はないものの、十分にMDを弛緩できなかった。立位での肘伸展運動では、随意的な伸展運動よりも重力による自由落下で反応時間が長いことが報告されている(Nakamura et al., 1984)。これらのことから、弛緩動作は収縮動作よりも困難であったと考えられ、被験者が弛緩動作を十分に行えるような状況にて、本動作を詳細に検討する必要性が示唆された。弛緩動作に集中できるようにS2に対して常に反応を行う課題に変更し、肩関節内転筋の収縮にて上肢を降下させていた1名で実験を実施した。 その結果、弛緩条件でMDの弛緩にて右上肢の降下を行うことができた。このとき、事象関連脳電位の随伴陰性変動には条件間で差がなかったが、上肢運動の反応時間は弛緩条件の方が遅かった。刺激出現前の準備状態が同等でも弛緩の方が動作開始までに時間を要することが示唆された。今後は、この条件にて実験を重ねて弛緩動作の詳細について検討した上で、収縮と弛緩の切り替えについて検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、上肢運動を随意的な筋の収縮あるいは弛緩にて開始する選択反応課題を課し、状況に応じた応答の選択とそれに向けての運動準備について検討した。しかし、弛緩での運動の開始は、収縮での運動の開始よりも困難であり、被験者が弛緩動作を十分に行えるような状況にて、本動作を詳細に検討する必要性が示唆された。したがって、課題設定を吟味しているところであり、収縮動作と弛緩動作の切り替えに関する検討およびそれの運動経験による差異は、検討できていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に測定したデータの結果から、弛緩動作は収縮動作よりも困難であると考えられ、被験者が弛緩動作を十分に行えるような状況にて、本動作を詳細に検討する必要性が示唆された。それを受けて、弛緩動作に集中できるようにS2に対して常に反応を行う課題に変更したところ、被験者は弛緩による動作を行えたことが確認できた。したがって、平成28年度は、この課題条件にて実験を重ねていき、弛緩による動作の詳細について検討する。さらに、収縮と弛緩の切り替えについて、選択反応課題にて切り替えに関連する事象関連脳電位P300を用いて検討を行っていく。
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