研究課題
平成29年度は日本人若年女性の身体不満の要因を特定するため、この集団に対して1)生活環境や社会的価値観、健康や体格に関する情報元に関する質問項目と妥当性が報告されている複数の尺度によるアンケート票、2)食物摂取頻度調査(FFQ)、3)性格特性検査、4)3日間の活動量計と身体活動記録による身体活動調査、5)43項目におよぶ身体計測、そして5)多周波生体電気インピーダンス計(MFBIA)と腹部脂肪計を用いた体組成測定を実施した。所属先における担当業務の増加のため、目標人数の約半分に当たる48名からデータを得られた。平成30年度には引き続きデータ収集を行うことを予定している。また平成29年度までにデータ収集を終えた本調査の第一段階である日本人若年女性とマレーシアに住む中華系マレーシア人女性の身体不満の国際比較から得られたデータの解析を進めた。調査項目すべてに回答していた183名の日本人女性と287名の中華系マレーシア人女性を比較したところ、日本人女性は中華系マレーシア人女性と同レベルのBody Mass Index (BMI)であったにもかかわらず、より高い身体不満を持っていることが明らかとなった。一方で中華系マレーシア人女性は摂食行動異常やうつリスクが高いことが示された。さらに日本人女性は中華系マレーシア人女性と比べて自尊感情が低いことも明らかとなり、中華系マレーシア人女性は自尊感情と身体不満やうつリスクとの間で相関がみられなかったのに対し、日本人女性ではこれらの間に中度の負の相関が確認された。この結果を第10回アジア太平洋臨床栄養学会議(10th Asia Pacific Conference on Clinical Nutrition: APCCN)で口頭発表を行った。
4: 遅れている
平成28年度に国内で広く用いられている食物摂取頻度調査のバージョンアップが発表されたことで予定していた手法との比較の検証を行ったこと、そして新たに多周波生体電気インピーダンス(Multi-Frequency Bioelectrical Impedance Analysis: MFBIA)が年度後半に販売されることが判明したことで、その機器の購入に向けた検証等を行ったことによって本研究における日本人若年女性に焦点を当てた調査の開始時期が遅れたことが挙げられる。さらに平成28年度以降、研究代表者の所属機関内における講義などの担当業務が増加し、平成29年度には500時間以上の担当授業時間となった。そのためこれに付随して生じる準備等にかかる時間も増加した結果、研究に費やすことができる時間の確保が制限されたことも本研究の進捗が遅れることとなった大きな要因として挙げられる。
本来であれば平成29年度が最終年度であったが、幸い補助事業延長申請が承認されたため、平成30年度を最終年度として調査を実施する。平成30年度は予定している日本人若年女性を対象としたデータ収集を完了させることを目標とする。また引き続き中華系マレーシア人女性との国際比較の結果について国際学会での発表および欧文雑誌への投稿準備を進める。
予定していた調査に遅れが生じていることで、被験者に対して支払う謝金およびデータ解析にかかる支出が発生しなかったこと、また学会発表のための渡航に掛かる支出を所属機関内の補助で賄うことができたこと、さらに所属機関内の担当業務の増加によって学会で発表した内容等を論文としてまとめる時間が十分確保できなかったため、論文投稿費なども発生しなかったことで次年度使用額が生じた。平成30年度に継続して実施する調査に参加する被験者に対する謝金およびデータ解析、そして論文の投稿費に充てる。さらにデータ解析が円滑に進むよう、人件費に充てることも検討する。
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