平成27年度及び平成28年度における本研究課題の調査は、北海道・東京都・山口県・沖縄県の4都市の秋季・冬季・春季・夏季にて、喘息体質者の運動(6分間のフリーランニング)時の肺機能指標の変化を評価することであった。平成27年11月に調査を開始し、平成28年7月に終了した。全国4都市にて各季節に調査を行うことで、大きく異なる気象・環境条件とそれに伴う特有のストレスが理解できた。同じ秋季でも、北海道では真冬並みの寒冷であり、沖縄県では気温20℃を超えていた。冬季の調査では、その気温差はさらに大きいものであり、これらの差は、都市間における喘息体質者の安静時の肺機能の差に影響を及ぼす可能性が考えられた。 四季の調査結果から、仮説通りの結果と意外な結果を得た。喘息体質者は、研究代表者がこれまで行ってきた研究(Takagi Y. et al. 2015)のように、夏季では肺機能指標の低下はみられず、春季や秋季、とりわけ冬季に顕著な低下がみられるものと仮説していた。3都市では仮説通りの結果は得られたが、北海道では意外性が高い結果であり、運動後の肺機能はむしろ回復する事例が観察された。この要因として、降雪による大気汚染物質の湿性沈着が考えられた。確実な知見による指針として発表するためにも、平成29年度から大気中の粒子に関する研究者(羽馬哲也 助教)とディスカッションし、大気中の粒子との関連性を検証する方針を立てた。 平成29年度は研究関連学会及び雑誌にて、上記の成果とその成果に貢献した喘息と運動に関する研究を発表した。日本体育大学の鈴川一宏教授に関心を抱いていただき、この研究の継続研究を共同で行うことになった。次回の研究課題(2018年4月に科研費採択済)では、低気圧及び気圧低下の影響(研究協力者: 関和俊 准教授)、火山灰と季節風の影響(研究協力者:山本正嘉 教授)についても検証する。
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