本研究は、ソーシャルメディアの利用行動を規定する心理的要因について明らかにすることを目的とした。2016年度は、ソーシャルメディア利用における意思決定バランス尺度を作成し、恩恵(Pros)/負担(Cons)の認知バランスと実際のソーシャルメディアの利用行動および依存性との関連について検証した。 研究の結果、恩恵尺度は、「つながり性」「機能性」の2因子(各5項目,計10項目)から構成された。負担尺度は、「情報漏えい」「誤解」の2因子(各5項目,計10項目)から構成された。 ソーシャルメディアの利用行動との関連については、ソーシャルメディア利用における恩恵として「つながり性」および「機能性」を高く認知・評価している者ほど、1週間におけるソーシャルメディアの利用時間が長いことが明らかとなった。一方、負担への認知・評価は利用時間とは関連しないことから、ソーシャルメディアを利用することによる危険性やリスクを伝達するだけの教育では利用行動を抑制することは難しいと考えられる。 依存性との関連については、ソーシャルメディア利用における恩恵を高く認知している者ほど、スマホへの「物理的依存」および「心理的依存」が高いことが示された。また、ソーシャルメディア利用における負担を高く認知している者が、恩恵について低く評価すると、中程度あるいは高く評価している者に比べ、スマホの電池が切れることに対する不安が低いことが明らかとなった。スマホの電池切れは利用時間と関連することが考えられ、負担を高く、恩恵を低く認知している者は利用時間が短いことが推測される。今後は「物理的依存」や「心理的依存」を抑制する要因について検証する必要があると考える。
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