研究課題
水晶体内クリスタリン会合体の主要成分であるαA-クリスタリンは水晶体内において、他クリスタリン分子の不溶化を抑制する分子シャペロン機能を有し、水晶体透明性の維持にとって重要な役割を果たす。昨年までに我々は、加齢後のヒト水晶体内において単量体化したαA-クリスタリンと、その内部アスパラギン酸(Asp)残基のうち、Asp58の著しい異性化(D-化)を見出した。本年度は、これまでより幅広い年代の水晶体(7歳-83歳)より抽出した可溶性画分を各々、ゲルろ過クロマトグラフィーに用いてサイズ毎に分離した。その後、約600 kDa付近のα-クリスタリン会合体画分と20 kDa付近の分子サイズを示したクリスタリン単量体画分を個別に回収後トリプシン消化し、消化後ペプチドを質量分析法による結合型Asp異性化解析に用いた。本研究において、クリスタリン単量体および会合体の両内部に年齢依存的に増加する異性化Asp残基(D-β-Asp 58)を見出した。現在、タンパク質中に異性化Aspを導入することは技術的に極めて難しい。そこで、大腸菌を用いてヒトリコンビナントαA-クリスタリンを作成し、その内部Asp58部位を他アミノ酸残基に変更した変異体を作成し、その物性を野生型と比較した。その結果、顕著なシャペロン機能の低下を見いだした。本研究ではαA-クリスタリン単量体および会合体両方において顕著なAsp異性化が見られたことから、Asp58の異性化が会合体内における分子間相互作用変化を誘起することが示唆された。加えて、Asp58部位がαA-クリスタリンのシャペロン機能にとって重要な部位であることが明らかとなった。このように、Asp異性化はα-クリスタリン解離・会合や、シャペロン機能の低下に寄与し、加齢性の白内障発症の一因となる可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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