研究課題/領域番号 |
15K16516
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
金指 美帆 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (10734527)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アスタキサンチン / 酸化ストレス / 糖尿病 / 微小血管障害 / 筋萎縮 / 栄養 / 抗酸化 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
【内容】本研究では,肥満型2型糖尿病における骨格筋インスリン刺激性糖取り込み障害の改善を目的に,血管機能と血管構造の破綻を治療ターゲットとした食品由来の抗酸化物質アスタキサンチンの効果検証と作用メカニズムの解明を目指す.H27年度の具体的な研究内容は,①アスタキサンチンが2型糖尿病モデルラットの耐糖能異常に与える効果を明らかにするため,糖尿病発症後からアスタキサンチンを投与し,経時的に経口糖負荷試験を実施した.結果,8週間投与での血糖値改善効果は認められなかった.②2型糖尿病モデルラットによる骨格筋内微小血管の3次元構造変化に対するアスタキサンチンの効果を検証するため,蛍光造影剤を還流させた筋サンプルを作製し,共焦点レーザー顕微鏡を用いて3次元画像を構築した.結果,アスタキサンチン摂取により血管容積減少予防に有効であることを確認した.今後,微小血管の直径・蛇行性・吻合血管数,アポトーシスを測定し,構造的な解析を進める.③アスタキサンチンが血管新生シグナルに与える影響を分子生物学的な解析により明らかにするための筋サンプルを作製し,現在解析を進めている.【意義】2型糖尿病患者に対して治療・予防プログラムとして運動療法が推奨されているが,高齢者や肥満者では効果的な運動継続が困難な場合が多い.従って,摂取することで治療効果が期待できる食品由来因子を用いた糖尿病治療法の確立は臨床的意義が強いと考える.【重要性】骨格筋は糖取り込み,及びエネルギー代謝における最大の器官である.アスタキサンチンによる酸化ストレス抑制を介した骨格筋内微小血管構造の改善,及び内皮型血管拡張因子合成酵素発現誘導による血管拡張能の改善を介した骨格筋インスリン刺激性糖取り込み障害の改善により,糖尿病患者の糖取り込みやエネルギー代謝を改善する可能性が高く,本研究課題は重要であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2型糖尿病モデル動物として,肥満,インスリン抵抗性,レプチン受容体異常症を呈するとされるHos:ZFDM-Leprfa (ZFDM) ラットを5週齢より飼育し,体重及び血糖値測定を実施した.全モデルラットにおいて14週齢で非絶食時血糖値が400mg/dl以上を示し,骨格筋の萎縮,及び骨格筋内微小血管障害発症を確認した.一方で,8週間のアスタキサンチン投与では血糖値改善には至らなかったが,血管容積減少予防に有効であることを確認した.従って,現在は共焦点レーザー顕微鏡にて骨格筋内微小血管の構造的解析,Western blotting法にて血管新生/新生抑制シグナル(VEGF/VEGFR, ANG-1 and -2/Tie2, TSP-1)解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋内微小血管構造・機能とインスリン抵抗性の関連性を検証する.その結果,アスタキサンチン投与開始時期及び投与期間の修正を検討する.従って,血管機能を検証するために,血管内皮細胞のAkt/eNOSシグナル解析,及びAkt/eNOSシグナル伝達とインスリン受容体との関係をIRS1/eNOS/NO pathway解析から明らかにする.また,糖尿病が骨格筋の糖取り込み能に及ぼす影響,及び食品由来の抗酸化物質アスタキサンチン摂取による改善効果を,インスリン刺激後のヒラメ筋における2-デオキシグルコース含有量を測定することで明らかにする.その結果,改善が見られた場合は,アスタキサンチンによる骨格筋のインスリン抵抗性改善作用におけるeNOS依存性作用を,血管拡張因子合成酵素阻害剤であるL-NAMEを用いて明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に購入を予定していたリアルタイムPCR関連試薬を,次年度購入予定へと変更したため,試薬相当額が次年度へと繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で使用する大部分の実験装置や測定機器は既に設置してあるため,抗体や試薬など,実験消耗品が研究経費の主である.次年度は,糖尿病モデル動物の購入,飼育費,遺伝子解析及びタンパク質解析のためのPCR関連試薬,抗体,糖取り込み能測定試薬,血管拡張因子合成酵素阻害剤などのメカニズム解析費用が必要となる.加えて,国内及び国外での成果報告と学術雑誌への投稿に研究費を使用することも計画している.得られた研究結果を公開することで情報を共有化し,研究成果の有効活用及び研究の更なる発展に役立てたいと考えている.
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