骨と骨格筋はどちらも環境、および、年齢に応じて、筋量・骨量が同調して変化するため、骨と筋肉の間のクロストークが存在するのではないかと考え、その相互作用を解明するために、本研究を行った。研究のモデルとしては、培養細胞系を用いて、骨芽細胞株と筋芽細胞株の共培養を行ったところ、分化した骨芽細胞との共培養により、筋芽細胞の融合が進み、形成された筋菅が自発的な収縮を起こすことが明らかとなった。この筋芽細胞の分化亢進は、骨芽細胞のconditioned mediumの添加や筋芽細胞と骨芽細胞が直接接触しないTranswellを用いた共培養では観察されなかったことから、細胞ー細胞間の直接の接触が必要であることがわかった。共培養開始後24時間ではMyogeninの発現がRNAレベルでもタンパクレベルでも増加しており、Myogeninの発現を誘導することが筋芽細胞の分化亢進に重要であることが示唆された。また、筋芽細胞の分化の様子を観察するために、GFPで可視化した筋芽細胞と骨芽細胞の共培養を蛍光タイムラプス顕微鏡を用いて解析したところ、共培養により筋芽細胞の移動度が亢進し、細胞が突起を伸ばす像が得られた。このことは骨芽細胞が筋芽細胞の細胞骨格に作用することを示唆している。本研究により、骨芽細胞と筋芽細胞の間には筋芽細胞の分化を促進する直接作用が存在することが明らかとなった。今後の課題としては、クロストークの分子メカニズムを解明するために、シグナル分子を同定することである。
|