立位姿勢において下肢に外力を与えて「他動歩行」させると、脊髄に存在する中枢パターン発生器(CPG:central pattern generator) が駆動して、通常歩行時に見られる筋活動に即した下肢筋活動が発現することが知られている。一方、立位他動歩行中には、換気量増加や血圧上昇などの呼吸循環反応も生じる。このため、CPGの駆動と合わせて呼吸循環反応が生じている可能性があるが、この可能性は未だ立証されていないため、本研究では「CPGを中核とする筋活動-呼吸循環反応のリンクが存在する」ことの検証を最終目的とした。呼吸循環反応と下肢筋活動反応の対応を見るために、本研究では、起立性の呼吸循環応答が生じない仰臥位姿勢にて歩行様の他動動作を実施した。GPGの駆動には足底への圧力が重要な要素となることから、はじめに仰臥位他動歩行様動作中において、足裏への圧力が加えられる場合において、動作と一致した筋活動が下肢に発現するか否かについて検討した。健常な若年男子8名を対象にして、0.25Hzの動作頻度(通常歩行の約4分の1の動作頻度)の他動動作を2回実施した。1回は足裏への圧力が無い場合 (NFP) と、もう1回は体重の約25%の圧力を片足ずつに加える試技 (FP) であった。筋電図は右脚腓腹筋および前脛骨筋から導出した。3名の被験者において、腓腹筋に動作と一致した筋活動がFP試技のみで観察された。これらの被験者について、呼吸循環反応に密接に関わる交感神経活動を心拍変動解析により求めた。しかしながら、特にFP試技における顕著な交感神経活動の亢進は認められなかった。
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