研究実績の概要 |
体内時計の乱れは、肥満発症リスクを高めるだけでなく、糖尿病、動脈硬化症や心筋梗塞などの発症リスクを上昇させる。肥満者を対象として、高照度環境下における運動時の血糖値変動および心自律神経活動の季節性変動、さらに、血中アディポカイン濃度 (TNF-α, IL-6, アディポネクチン)と時計遺伝子 (Clock, Bmal1, Per1, Cry2, Rev-erb-α, Rev-erb-β) の発現量の季節性変動を検討した。時計遺伝子は唾液サンプル中に含まれる口腔内上皮細胞からRNAを抽出した。 高照度環境下における運動中の血糖値の変動は低照度環境下と比較し有意差は見られず、心拍変動も顕著な差は見られなかった。しかし、運動前と運動中の肥満者の心拍数は、冬季が夏季に比べ高い傾向にあった。血中TNF-α濃度と血中IL-6濃度は、肥満者と非肥満者において差は見られず、夏季と冬季での季節性変動も見られなかった。血中アディポネクチン濃度は肥満者で有意に低い値となった。唾液中の時計遺伝子の発現は、Bmal1、Per1、Cry2、Rev-erb-βの発現が、夏季に比べ冬季において有意に低い値となり、時計遺伝子の発現量は、肥満者では非肥満者に比べ低い値であった。以上の結果より、短時間高照度光が運動中の血糖値変動および自律神経活動に及ぼす影響は少ないこと、また、肥満者での時計遺伝子発現量は非肥満者に比べ低い値であり、時計遺伝子の発現量は冬季が夏季に比べ低下することが示唆された。
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