本研究の目的は,抑うつに着目したサルコペニア予防・改善プログラムを作成し,その効果を検証することである.まず,地域在住高齢者(以下,地域高齢者)におけるサルコペニアと抑うつとの関連を検討するため,研究課題1として,地域高齢者を対象に横断研究を実施した.その結果,交絡要因を調整した後でも,抑うつと骨格筋量指数に有意な負の関連が認められ,抑うつ状態にある高齢者は骨格筋量が少なく,サルコペニアのリスクが高いことが示唆された.次に,抑うつとサルコペニアの因果関係を確認するため,研究課題2として縦断研究を実施した.サルコペニアの判定には,「Asian Working Group for Sarcopenia」の基準を用いた.その結果,交絡要因を調整した後でも,2年後のサルコペニアとベースラインの抑うつ症状に有意な負の関連が確認された.研究課題1,2を通して,抑うつがサルコペニアに及ぼす影響を確認できたため,研究課題3では,抑うつの発症に関わる要因について,地域高齢者を対象として縦断的に検討した.その結果,2年後の抑うつ発症に関連した要因として,ベースラインの抑うつ症状,配偶者の有無,健康状態,1日の身体活動量(以下,PA)が抽出された.PAについては,その他の要因(ベースラインの抑うつ症状,配偶者の有無,健康状態)を調整した後においても,抑うつとの間に有意な負の関連が認められた.これらの結果を踏まえて,抑うつに着目したサルコペニア予防・改善プログラムを作成し,パイロット研究を実施した.その結果,継続性への配慮などプログラムの修正点が明らかとなり,修正プログラムの作成に至った.
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