これまで腰部多裂筋深層線維が活動しやすいアライメントについて検討を行い,前額面骨盤中間位,矢状面においても前傾位,中間位であることが明らかにした.そこで,今年度は腰部多裂筋が活動しやすい骨盤アライメントになることを目的としたエクササイズを実施し,疼痛,身体機能,精神心理機能への効果について検証することとした. 対象は,腰痛を訴える者16名(腰痛群)と腰痛の既往歴を有する者9名(腰痛既往群)とし,介入は2週間に1回,計6回実施した.介入内容は,腰痛の基礎知識および対処方法などの教育と腰部多裂筋深層線維の筋活動が得られやすい骨盤中間位を目標に,不良姿勢を改善させることを目的とした腰痛体操とした.なお,腰痛体操は骨盤のアライメントによって異なるものを指導した.介入前後の評価指標は,痛みの程度と腰痛による機能障害(Roland-Morris disability questionnaire),精神心理機能として破局的思考(Pain Catastrophizing score),恐怖回避思考(日本語版Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire),抑うつ(Geriatric Depression Scale-5),身体機能検査(長座体前屈,片脚立位保持時間,30秒立ち上がりテスト,Timed Up and GO test)を測定した. その結果,腰痛群では介入前に比べて介入後で痛みの程度が有意に改善した.一方,腰痛既往群では介入前に比べて介入後に破局的思考が有意に高まった.このことから,不良姿勢に注目した介入は,腰痛群には効果的であるが,腰痛既往群には精神心理機能を悪化させる可能性があることを示した.
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