研究課題/領域番号 |
15K16533
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
原田 慎一 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (60633443)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳虚血ストレス / 耐糖能異常 / orexin-A / 迷走神経 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、神経ペプチドである orexin-A (OXA) を視床下部内に局所投与することで、迷走神経を介して肝臓における insulin シグナル系を賦活化させ、脳虚血性耐糖能異常による神経障害の増悪を抑制する知見を得ている。近年、脳虚血後の糖代謝異常に対し、肝臓における炎症因子の増加が関与することが報告された。そこで、本研究では、 orexin-A が迷走神経を介して、脳虚血後の糖代謝異常および肝臓における炎症因子の増加に及ぼす影響について検討した。5 週齢の ddY 系雄性マウスを用い、局所脳虚血モデルは、2 時間の中大脳動脈閉塞法 (MCAO)、vagotomy モデルは、肝臓枝迷走神経を切除することによって作成した。OXA (5 pmol/mouse) は、MCAO直後に単回視床下部内局所投与した。神経障害の発現は、梗塞巣形成ならびに行動障害を評価した。MCAO 後の血糖値変化として空腹時血糖値 (FBG) を測定し、各種タンパク質の発現変化はwestern blot 法によって解析した。OXA は、MCAO 1 日後の FBG の上昇、肝臓における insulin 受容体の発現減少ならびに糖新生関連酵素の発現上昇、炎症因子の一つであるtumor necrosis factor-αならびに interleukin-1β の発現上昇、および MCAO 3 日後の梗塞巣形成ならびに行動障害発現を有意に抑制した。これらの作用は、N-ブチルスコポラミンまたはvagotomyによって有意に消失した。以上の結果から、視床下部の orexin-Aは迷走神経を介して肝臓における炎症因子の増加を抑制し、それが脳虚血後の糖代謝異常の抑制に一部関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画通り、おおむね順調に研究が進み、現在その内容を論文投稿中である。脳虚血後の膵臓機能変化に対するNGF/TrkAに関する内容は、Biol. Pharm. Bull.に受理された。平成28年度は、前年度の結果と基に炎症性サイトカインと虚血性耐糖能異常の関連を追及していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画通り、視床下部を介した中枢-末梢臓器間連関による脳虚血誘導性耐糖能異常および神経障害発現に対する視床下部おける orexin-A/肝臓における炎症性サイトカインまたはアディポカイン間の interaction に関する検討を行う予定である。以下、詳細を示す。 1. 脳虚血性耐糖能異常発現に対する肝臓における炎症性サイトカインまたはアディポカインの発現変化 2. 脳虚血性耐糖能異常に対する交感神経系の関与 3. In vitro 系を用いた肝臓における糖代謝制御因子の検討
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