研究課題/領域番号 |
15K16536
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
久米 慧嗣 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別研究員 (30708441)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 疲労科学 / 疲労代謝 / 免疫・炎症 / 予防医学 / 代謝解析 / バイオインフォマティクス / トランスクリプトーム解析 / 疲労行動解析 |
研究実績の概要 |
慢性疲労症候群(CFS)は、原因不明の強い全身疲労倦怠感などが長期間に渡り継続する原因不明の病態である。CFS患者と同様な代謝病態を示す疲労モデル動物を利用した病態解析により、疲労時にはエネルギー産生の低下に加え、疲労調節因子が、疲労時に特異的な代謝回路や組織の炎症反応を制御していることが予測された。当研究では、疲労調節因子が、CFS疾患に類似な、動物の疲労行動を本当に制御しているのかを決定するために、以下の研究を実施する。まず、疲労調節因子の遺伝子を各臓器に恒常発現させたモデル動物を作製し、疲労行動、代謝異常、および組織炎症との関係性を明確にする。次に、疲労調節因子、および代謝病態の機能制御が、疲労病態の改善や予防に資するかを解明する。上記の研究を展開することにより、疲労調節因子が疲労病態を生み出す責任分子であることを証明でき、CFS疾患のような疲労病態の改善や予防への一助となるものと考えられる。当年度では、疲労調節因子の遺伝子断片を含むAAVベクターのプラスミドを設計し、DNAクローニングなどによって目的のAAVベクターを得た。AAVベクターは、大腸菌Stbl3を用い、種々の条件(大腸菌培養条件、およびプラスミド抽出条件 等)を検討することによって、大量産生、および高純度精製に成功した。今回、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAV(AAV-GFP)をポジティブコントロールとして、動物へのAAVの感染実験を行ない、肝臓での高効率での感染を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究では、ベクターの免疫原生が低く、動物個体への遺伝子導入に適している理由から、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した遺伝子導入実験を試みた。疲労調節因子の遺伝子断片を含むAAVベクターのプラスミドを設計し、DNAクローニングなどによって目的のAAVベクターを得た。AAVベクターは、大腸菌Stbl3を用い、種々の大腸菌培養条件、およびプラスミド抽出条件 等を検討することによって、AAVベクターの大量産生、および高純度精製に成功した。すでに、複数回の動物実験に十分量のAAVベクターの取得にも成功している。今回、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAV(AAV-GFP)をポジティブコントロールとして、動物へのAAVの感染実験を行なった。AAVベクターを、ヘルパーベクターなどとともにヒト胎児腎細胞HEK293にトランスフェクションし、約3日間細胞培養を行い、ウイルス精製などのプロセスを経て、目的とするAAV-GFPを取得した。AAV-GFPを動物の尾静脈より投与し、各臓器への感染性を調べた。その結果、投与後1ヶ月の肝臓において、強いGFP蛍光が観察され、マウス1個体あたり1千億ウイルスの投与濃度で、50%前後の肝細胞への感染が確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、疲労調節因子の遺伝子を発現するAAVを使用して、動物への感染実験を実施し、各種代謝物の測定、遺伝子発現解析、動物行動解析による疲労度評価などを行なう予定である。AAV感染後に、疲労行動、および疲労代謝現象が観察された場合には、各種阻害剤(バルプロ酸など)を使用して転写シグナル系、あるいは代謝経路の阻害実験を行い、疲労調節因子と疲労行動との関係性を探る研究を進める。
|