研究課題
生活習慣病を含めた様々な疾患の素因は,胎生期並びに乳幼児期の環境と遺伝子の相互作用により形成され,出生後の生活習慣の負荷が加わって発症するというDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 説が近年注目されている.我が国では,出生体重2500g以下の低出生体重児の出生率が増加しており,将来糖尿病,代謝疾患などの生活習慣病の罹患リスクが増大する可能性が危惧される.しかしながら,未だにDOHaD説の分子メカニズムは明らかでない.そこで,我々は,DOHaD説に基づく生活習慣病の病態解明とその予防法の開発のための基盤的なデータの収集を行うことを目的として,研究を行った.これまでに40検体を用いてDNAメチル化解析を行ったが,今回,さらに検体数を増やし,臍帯血(91検体),胎盤(126検体)を用いて,標的遺伝子のDNAメチル化率と胎盤重量,出生体重との関連を検討した.標的遺伝子としては,代謝系遺伝子としてLEP,NDUFB6,PPARA,NR3C1,PPARGC1A,HSD11B2,ADIPOQ,RXRAの8つの遺伝子,インプリンティング遺伝子としてMEST,LIT1,SNRPN,H19,MEG3の5つの遺伝子,またglobalなDNAメチル化を反映する繰り返し配列のLINE1の合計14個を選択した.その結果,胎盤重量と臍帯血におけるNDUFB6,NR3C1,PPARGC1,胎盤におけるNDUFB6,LIT1,MEG3,PPARGC1のDNAメチル化率には有意な相関関係を認めた.さらに,出生体重と胎盤におけるH19,NDUFB6,MEG3,RXRAのDNAメチル化率に有意な相関関係を認めた.このように,今回我々は,出生体重および胎盤重量と有意な相関関係がある遺伝子のDNAメチル化領域をいくつか見出した.
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Carcinogenesis
巻: 38(3) ページ: 261-270
10.1093/carcin/bgx005.