研究課題/領域番号 |
15K16540
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
岩下 雄二 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70730406)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子生物学 / 老化 / 脂肪 / マイクロアレイ / lncRNA / siRNA / shRNA |
研究実績の概要 |
脂肪の組織レベルの老化の分子的実体の一つであるlong non-coding RNA (lncRNA)が糖尿病態に関与するか検証するため、前年度までに取得したマウス脂肪組織の老化に特異的な発現変化を示すlncRNAの情報に加え、一部共通した機序が期待される、マウス胚性線維芽細胞の細胞老化に特異的なlncRNAの情報を統合し、11個のlncRNAに焦点を絞った。これらのlncRNAの機能的意義を明らかにする目的で、発現抑制を行った。4種類の配列からなる、すでにデザインされたsiRNAプール、または新たにデザインした修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを、脂肪細胞への分化能を有するマウス胚性線維芽細胞にトランスフェクションした結果、9個のlncRNAで一過的な発現抑制を確認した。これらのうち、7個のlncRNAの発現抑制では、細胞数の減少も観察された。さらに、少なくとも2個のlncRNAの発現抑制では、継代培養によって増加する細胞老化マーカー遺伝子であるINK4AとARFの発現が低下することが分かった。さらに、これら2つのlncRNAを恒常的に発現抑制するために、shRNAを発現するレトロウイルスベクターを3種類ずつデザイン・構築し、マウス胚性線維芽細胞に感染・発現させ、抗生物質による選択を行った。これらの細胞のRNAを回収し、lncRNAの発現抑制と老化関連遺伝子の発現変化をqPCRで検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析により、機能的注釈の不明なものの多いlncRNAの中から、老化に依存して発現変動するものを選び出した。選んだlncRNAの機能を明らかにするために、発現抑制系の構築を試み、11個中9個という高い達成率で発現抑制を実現した。発現抑制と対になる過剰発現の実験系や、lncRNAに物理的に結合する他のタンパク質などの生体分子の同定などは、まだ実現していないので、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
発現変動により選択した老化関連lncRNAの発現制御を、マウス胚性線維芽細胞の脂肪細胞分化の実験系に導入し、インスリン抵抗性や炎症マーカー遺伝子発現等の糖尿病態からの回復が可能か検証する。
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