研究課題
精神疾患を合併した母から出生した児において何らかの発達の問題がみられることが多い。それはその後の親による虐待や児の非行など社会的な問題にもつながるとされている。発達の問題の原因としては遺伝的要因や子宮内の要因、出生後の母子愛着形成などの環境要因などが考えられている。今回の研究では携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(PocketNIRS,ポケットニルス)による脳血流変化の測定を行うことを予定していたが、体動による変動など機械調整に時間を要したため、今までも使用経験のある91チャンネルNIRS ( ETG-7000, Hitachi Medical Corporation, Tokyo, Japan ) を使用して計測を行った。プローブを頭部全体に配置し、自然睡眠下で10分間、oxy Hb、deoxy Hb量変化を測定した。その結果、在胎週数や生後日齢により脳循環のゆらぎが変化することが確認されたが、母の内服や精神疾患による違いは確認できなかった。唾液中オキシトシンの測定については、ELISA法では感度以下となる可能性が高いために、高感度の液体クロマトグラフィーを使用した方法を確立しようとしたが研究本研究期間内では測定方法の確立まで至らなかった。視線追跡装置(アイトラッカー,tobii1750)による児の視機能による発達の評価を組み合わせて、合併症のない母から出生した児と精神疾患を合併した母から出生した児の乳児期早期の脳機能を評価を行ったが、乳児期早期では明らかな注視時間の違いや注視位置の違いはみられなかった。しかし、研究期間内で観察を続けた精神疾患の母体から出生した児に一定の割合で発達に関する問題が発生していることが明らかになり、今後もその発生要因や早期診断を行う手法の確立が望まれると考えられた。
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