研究課題/領域番号 |
15K16546
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研究機関 | 京都西山短期大学 |
研究代表者 |
松阪 崇久 京都西山短期大学, その他部局等, 講師(移行) (90444992)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遊び / 環境 / チンパンジー / 発達 / 笑い / 保育 / 学び |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)チンパンジーがどのように周囲の環境と関わり行動できるようになるかを、多様な遊びの観察を通して明らかにすることと、(2)ヒトの遊びとの比較によって、ヒトとチンパンジーそれぞれの発達過程の特徴を明らかにすることである。当初の予定では、平成28年度にタンザニア・マハレ山塊国立公園での野外調査をおこなう計画であったが、大学業務の都合により調査は実施せず、これまでの調査で得られた遊びのデータを元に研究・分析を進めた。 平成28年度には2本の論文を完成させた。1本は過年度に投稿したもので、平成28年度に改稿をおこない、『子ども学』(萌文書林)に掲載された。野生チンパンジーの遊びの多様性についてまとめ、ヒトと比較した論文である。環境に関心を持ち、主体的に働きかけることで多様な遊びとそれに伴う学びが見られるところに、両種の1つの共通点があった。一方、協同遊びや三項関係的な遊びと、遊びに関する教示や支援がチンパンジーには見られなかった。これらより、ヒトの遊びを支える人的・物的な環境の役割について考察し、遊び環境はいかにあるべきかをとくに保育との関連で議論した。 もうひとつは、チンパンジーの遊びにおける利他性と共感性の発達に注目し、ヒトと比較したものである。年下の遊び相手への配慮や、遊び相手を笑わせる・楽しませる働きかけなどは、両種に共通して見られた。一方、ヒトはより積極的に援助や物の分与をおこない、自発的な協力・教示や間接互恵性も見られる。人類は、共感的で協力的な性質をより発達させ、協同的な社会を築いてきたと考えられる。以上を踏まえて、遊びを通した思いやりの発達を保育や育児においてどのように援助すべきかについて考察した。この論文は『西山学苑研究紀要』に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の開始のタイミングで保育者養成課程に異動したため、本研究課題の2つの目的のうち「ヒト乳幼児との比較」により重点をおいた研究をおこなった。そのため、チンパンジーの多様な遊び(水遊び、物遊び、オトナ個体の遊びなど)に関する個々の分析については遅れることとなったが、ヒト乳幼児との比較や、それを基にした保育に関する考察については進展した。全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
大学業務の都合により、タンザニアでの野外調査をおこなうことは困難な状況であるが、これまでに収集したデータの分析を進めることにより、本研究課題の2つの目的を達成するべく研究をおこなっていく。希少な遊びの事例の分析など、必要な場合には、マハレのチンパンジーを対象に調査をおこなっている他の研究者によるテータ提供も仰ぎながら、研究を進めていく予定である。また、得られた知見を保育実践にも役立つものとするため、保育に関する研究についても幅広く文献を集めて考察を深めていく。
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