最終年度は、1)ω-OHセラミドをアシルセラミドへとリノール酸をアシル化するアシルトランスフェラーゼの解明を光アフィニティーラベル法によって解明すること、2)および皮膚バリア機能の脂質ラメラ構造形成、維持に重要なタンパク結合型セラミドの主成分であり前駆体であるω-9位にシス型のオレフィンを持つ超長鎖脂肪酸(C34)含有アシルセラミドの合成についても新たに着手した。 1)アシルトランスフェラーゼの解明については、先に他グループの遺伝学的手法によりホスホリパーゼの1種、PNPLA1であることが報告された(Nat. Commun. 2017)。しかし、脂質代謝酵素の光アフィニティーラベル法による解明研究は例がないため、その可能性を検討した。光アフィニティープローブは当初、親水性樹脂に固定したものを作成する予定であったが、プローブの疎水性(超長鎖脂肪酸による)や脂質のかさ高さにより、固定化が困難であった。そこで樹脂の代わりにビオチンを標識タグとすることで、プローブを作成した(昨年度末)。しかし、本プローブも水溶性が低いため、親水性を保持したプローブの再構築の必要性が示唆された。現在は親水性を保持するためにPEGをリンカーとしたプローブ合成、また現在開発中の新型ジアジリン搭載型光アフィニティープローブの作成を行なっている最中である。本年度でプロジェクトは終了するが、これらプローブを作成後は標的のPNPLA1が釣り上がるのか否か、光アフィニティーラベル法の実用性を検討する。 2)ω-9位にシス型のオレフィンを持つ超長鎖脂肪酸(C34)含有アシルセラミドの合成については、大量合成例がないので本研究期間中に見出した超長鎖脂肪酸の溶解可能な有機溶媒の組み合わせによってWiitig反応を効率良く進行させることに成功し、全合成に成功した。これらの結果について現在、論文投稿を行なっている。
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