研究課題/領域番号 |
15K16559
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堤 浩 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70398105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペプチド / 自己組織化 / ヒドロゲル / 細胞 / 三次元培養 / イメージング |
研究実績の概要 |
細胞外にはpHや温度、成長因子や情報伝達物質などの解析の対象とすべきさまざまな要因や生命現象が存在すると考えられるが、そのための手法は確立されていなかった。本研究では、細胞を三次元的に培養し、三次元培養における細胞外環境をリアルタイムにイメージングするための手法を新たに開発することを目的として、自己組織化ペプチドゲルを創製し、細胞の三次元培養へ展開し、三次元培養環境における細胞外pHのリアルタイム蛍光イメージングを行うことによりモデルシステムの確立を行うこととした。本年度は、これまでの申請者らの知見に基づいて両親媒性の自己組織化ペプチドを設計・合成し、それらの自己組織化能を評価した。円二色性スペクトル測定および透過型電子顕微鏡観察の結果、合成したペプチドはすべてβ-シート構造を形成してナノファイバーへと自己組織化することを明らかにすることができた。また、ゲル化試験の結果、自己組織化ペプチドu(FFiK)2は中性条件下で透明なヒドロゲルを形成し、0.1wt%という低濃度でもヒドロゲルを形成できることがわかった。さらに、u(FFiK)2は細胞培養に用いる培地でもヒドロゲルを形成できることを確認した。次に、細胞の三次元培養に向けてHeLa細胞およびHEK293細胞の培養試験を行った結果、u(FFiK)2ゲル内に毒性を示すことなくHeLa細胞およびHEK293細胞を分散することができた。また、培地成分がゲル内に十分拡散し、いずれの細胞も培養できることを見出した。以上より、細胞の三次元培養を行うための基盤を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は自己組織化ペプチドの合成と機能評価および細胞培養とpHイメージングに向けたゲル環境の解析を計画していた。自己組織化ペプチドの合成と機能評価については、機能ユニットを導入した自己組織化ペプチドの共組織化実験を除いて、ほぼ研究計画通りに遂行することができた。機能ユニットを導入した自己組織化ペプチド誘導体の合成は終了しており、共組織化実験については現在進行している段階である。また、平成28年度に計画していた自己組織化ペプチドゲルの細胞培養への適用性を検証すること平成27年度に優先して行ったため、ゲル環境の解析については予定を繰り下げて現在検討中の段階である。 細胞の三次元培養については平成28年度に計画していたが、予備実験により良好な結果が得られることが予想されたため、平成27年度に繰り上げて検討を行った。その結果、平成28年度の実験計画の一部を達成することができた。 以上のことから、研究課題の遂行に向けておおむね順調に計画を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更により繰り下げた平成27年度計画の機能化自己組織化ペプチドの共組織化実験およびゲル環境の解析を遂行する。平成28年度計画の細胞の三次元培養はすでに達成しているが、平成27年度計画の実験を完遂することにより、より効果的な細胞の三次元培養のための分子設計やゲル環境の構築へと展開する。その後は当初の平成28年度計画の通り、得られた情報をもとにモデル細胞であるHeLa細胞およびHEK293細胞の高効率な三次元培養条件を確立する。続いて、細胞外pH環境のリアルタイム蛍光イメージングを行い、細胞外環境イメージングのための手法を確立する。また、各種の阻害剤を用いた実験により薬剤に対する細胞応答を検出するための細胞チップへの応用の可能性についても予定通り検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は一部実験計画を変更したため、サンプルを保存しておくために必要な備品として購入を予定していた薬用保冷庫(400千円)および実験に必要な試薬や器具の購入計画に変更が生じたため、次年度に研究費の一部を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、繰り越した研究費を薬用保冷庫の購入費用に充て、その他の研究費は当初の研究計画に従って試薬や器具の購入経費に充てる予定である。
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